改訂新版 世界大百科事典 「蛍光増白剤」の意味・わかりやすい解説
蛍光増白剤 (けいこうぞうはくざい)
fluorescent brightening agent
蛍光漂白剤fluorescent bleaching agent,蛍光染料fluorescent dyeともいう。近紫外部の光を吸収し,青紫の蛍光を発する染料。1929年クライスP.Kraisがセイヨウトチノキの樹皮抽出物から得られた6,7-ジヒドロキシクマリンの配糖体で白布を処理して輝いた白さを得たことが始まりである。工業的には40年にドイツのイーゲー・ファルベン社でスチルベン系蛍光増白剤が開発され,今日まで染料の新しい分野として発展してきた。蛍光増白剤の特徴は,それ自身は無色ないし淡黄色であって,330~390nmの近紫外部に吸収をもち,紫外線を吸収して420~435nmの青色の蛍光を出すことである。繊維などの黄ばみは青色領域の光を吸収する物質によって起こるが,蛍光増白剤はこれを補うことにより黄ばみを消し,輝くような白さを与える。化学構造としては,スチルベン系,ベンゾオキサゾール系,スチリル系など7~8種の基本形があり,これらの基本構造をもつ化合物をスルホン化などによって水溶性としたアニオン型,第四アンモニウム基を導入したカチオン型,水に難溶性の非イオン型がある。これら3種の型は,染着する繊維の種類,目的に応じて使い分けられ,たとえばセルロース繊維の染着や洗剤配合用にはアニオン型が使用される。蛍光増白剤は染料の一種で原則として繊維に染着して増白作用を示すのが目的であるため,それぞれの化学構造には繊維に対して染着するような工夫がほどこされている。用途は,繊維染色用,洗剤配合用,合成繊維原液着色用,合成樹脂用,製紙工業用に大別される。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報