スチルベン(読み)すちるべん(英語表記)stilbene

翻訳|stilbene

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スチルベン」の意味・わかりやすい解説

スチルベン
すちるべん
stilbene

芳香族炭化水素の一つ。化学式C6H5CH=CHC6H5 分子量180.3。1,2-ジフェニルエチレン、トルイレンともいう。シス(Z)体(融点5~6℃、沸点は水銀柱13ミリメートルで145℃)、トランス(E)体(融点124.5~124.8℃、沸点は306~307℃)の2種類の異性体が存在し、前者は不安定形でイソスチルベンともよばれる。トランス体はベンゾインクレメンゼン還元亜鉛塩酸)で合成される。シス体はα(アルファ)-フェニルケイ皮酸のクロム酸‐銅による脱炭酸で生成する。スチルベンのシス‐トランス異性化はオレフィン化合物の幾何異性体間の異性化の代表例である()。熱的変換法によれば安定なトランス体が生成するが、光照射による変換法を用いれば不安定なシス体が9倍も多く生成する。光増感反応によってもシス体が得られるが、生成比は増感剤の種類により異なる。スチルベンの二重結合には臭素、水素が容易に付加する。光照射すると閉環をおこし、フェナントレンを与える反応もある。スチルベン染料とは、スチルベンを部分構造として含む染料をいう。

[向井利夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スチルベン」の意味・わかりやすい解説

スチルベン
stilbene

C6H5CH=CHC6H5 で表わされる化合物。 (1) トランス形 無色結晶,融点 124℃。 (2) シス形 イソスチルベンともいう。融点5~6℃。スチルベンの誘導体なかには,繊維製品のケイ光増白剤として利用されるものや発情作用,抗かび作用,抗マラリア作用などを示すものがある。

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