日本大百科全書(ニッポニカ) 「蟹江」の意味・わかりやすい解説
蟹江(町)
かにえ
愛知県西部、海部郡(あまぐん)にある町。町の30%が水域。福田川を挟んで名古屋市中川区に接し、干拓新田の海抜ゼロメートル地帯にある水郷の町。1889年(明治22)町制施行。1906年(明治39)西ノ森、須成(すなり)、新蟹江の3村と合併。JR関西本線、近畿日本鉄道名古屋線も通じ、道路は国道1号、東名阪自動車道(ひがしめいはんじどうしゃどう)(蟹江インターチェンジ)が走っている。中心地区の蟹江本町は中世の城下町で、近世は蟹江川の河口港として、また伊勢(いせ)湾舟運の拠点としてにぎわった。伊勢湾台風(1959)では長期間冠水し大きな被害を受けた。名古屋市に近く、交通至便なため工場、住宅が激増している。キク、カーネーションなどの花卉(かき)園芸が盛んで、特産は酒、みりん、線香。最近は温泉町としても知られ、尾張(おわり)温泉や富吉(とみよし)温泉がある。冨吉建速神社(とみよしたけはやじんじゃ)・八剱社(はっけんしゃ/やつるぎしゃ)の須成祭は津島天王祭とともに県下では御霊(ごりょう)信仰の祭礼として有名で、車楽船(だんじりぶね)行事と神葭(みよし)流しは国指定重要無形民俗文化財およびユネスコの無形文化遺産。同神社の両本殿はともに国指定重要文化財。鹿島神社の境内には、蟹江を訪れた文人たちの句碑が並ぶ文学苑がある。面積11.09平方キロメートル、人口3万7338(2020)。
[伊藤郷平]
『『蟹江町史』(1973・蟹江町)』