葡萄糖(読み)ブドウトウ(その他表記)grape sugar

翻訳|grape sugar

デジタル大辞泉 「葡萄糖」の意味・読み・例文・類語

ぶどう‐とう〔ブダウタウ〕【××萄糖】

単糖類の一。Dグルコースのこと。でんぷんグリコーゲンなどの多糖類成分で、無色結晶。水によく溶け、還元性を示す。ブドウなどの果実蜂蜜はちみつに多く、人間の血液中にも一定量含まれる。デキストロース

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「葡萄糖」の意味・読み・例文・類語

ぶどう‐とうブダウタウ【葡萄糖】

  1. 〘 名詞 〙 単糖類の一つ。化学式 C6H12O6 白色結晶で甘味は蔗糖より弱い。水に溶けやすく、還元性がある。葡萄の果実や蜂蜜(はちみつ)など広く生物界に分布し、人体の血液には約一パーセント含まれる。生物組織中でエネルギー源として消費される。自然には光合成の結果生成され、工業的には澱粉やセルロースを希酸で加水分解して得られる。アルコール発酵の原料・医薬などに用いられる。Dグルコース。〔薬品名彙(1873)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「葡萄糖」の意味・わかりやすい解説

ブドウ(葡萄)糖 (ぶどうとう)
grape sugar

D-グルコースglucoseともいい,最も代表的なアルドヘキソースである。遊離の状態で甘い果実の中に多量に存在し,動物体内には,血液,脳脊髄液,リンパ液中に少量含まれるが,糖尿病患者の尿中には多量にみられる。麦芽糖,ショ糖,乳糖などの二糖類の構成糖であるほか,デンプン,グリコーゲン,セルロースなどの多糖および各種配糖体の基本単位である。炭水化物が体内で分解されてエネルギーに変わる場合には,一度ブドウ糖あるいはブドウ糖リン酸エステルに変化する。多くの生物にとって,最もよいエネルギー源であり,解糖によって分解され,発酵,呼吸に使用される。

ブドウ糖は,六つの炭素をもつ六炭糖で,水溶液中ではα-D-グルコースとβ-D-グルコースが3:2の割合で平衡に達する。

ブドウ糖の甘みは,舌の上で吸熱する涼感のあるもので,甘味度は砂糖の100に対して63~88と,かなり幅がある。一般にブドウ糖の甘みは,溶液が濃厚であるとき,および低温であるときに強く感じる。これは,溶液中でのα⇄βの平衡が濃厚状態あるいは低温で甘みの強いα型が増加する方向に平衡がずれるためと考えられている。

ブドウ糖は,工業的にはデンプンにα-アミラーゼ,グルコアミラーゼという2種類の微生物アミラーゼを作用させて加水分解して得る。製造されたブドウ糖は,甘味料,食用,医薬用その他に用いられるが,日本においては,含水結晶ブドウ糖,無水結晶ブドウ糖,精製ブドウ糖の3種類についてJAS(日本農林規格)が制定されている。ブドウ糖原料としては,いかなるデンプンも利用できるが,現在は,コーンスターチサツマイモデンプンジャガイモデンプンが用いられている。

(1)含水結晶ブドウ糖 JASで決められているものは,水分含量8.0~10.0%で,ブドウ糖以外のデキストリン分が0.5%以下(特級),1.5%(標準)でひじょうに純度の高いものである。結晶槽で温度降下法によって50~200nmの粒形に結晶させて分蜜し乾燥する。用途はパン,粉末製品,ガム,洋菓子,和菓子,缶詰,清涼飲料,ソルビットなどである。

(2)無水結晶ブドウ糖 デキストリン含量は含水結晶ブドウ糖と同じ。水分含量が0.5%以下。砂糖と同様に結晶缶で蒸発濃縮しながら50~200nmの粒形に結晶させ分蜜,乾燥させる。おもな用途は,ガム,粉末製品,洋菓子,和菓子,缶詰,清酒,医薬用などである。

(3)精製ブドウ糖 デキストリン含量3%以下で水分含量10%以下のものである。精製,濃縮した糖液を小型容器で固結させ切削して粉末にする方法や噴霧乾燥などにより急速結晶させ球状に造粒する方法で製造する。おもな用途は,パン,洋菓子,和菓子,清涼飲料,清酒,缶詰,冷菓などである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「葡萄糖」の意味・わかりやすい解説

ブドウ(葡萄)糖【ぶどうとう】

化学式はC6H12O6。D-グルコースとも。最も広く生物界に存在し,生体内で重要な役割をもつ単糖類。遊離の状態では甘い果実や蜂蜜(はちみつ)などに多く,血液やリンパ液中にも含まれる。また少糖類(麦芽糖,ショ糖,乳糖など),多糖類(デンプン,グリコーゲン,セルロースなど),配糖体などの構成成分。水に易溶,エタノールに難溶の白色結晶で,天然では多くはD-グルコピラノースα型(融点146.5℃,比旋光度[α](20/)(/D)=+109.6°)として存在し,水溶液では一部β型(融点148〜150℃,比旋光度[α](20/)(/D)=+20.5°)に移行し,比旋光度が減少して[α](20/)(/D)=+52.3°で平衡に達する。フェーリング液,アンモニア性硝酸銀水溶液を還元。フェニルヒドラジンと反応してヒドラゾンおよびオサゾンをつくる。生物にとっては重要なエネルギー源で,発酵や呼吸の基質となり,二酸化炭素と水とに分解される(解糖)。工業的には芋などのデンプンを希酸で加水分解してつくられ,ブドウ糖注射液,甘味料,発酵工業原料,還元剤など用途が非常に広い。(図)
→関連項目境界型糖尿病血糖生理的食塩水セルロース低血糖症麦芽糖

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

化学辞典 第2版 「葡萄糖」の解説

ブドウ糖
ブドウトウ
grape sugar

[同義異語]D-グルコース

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

生活習慣病用語辞典 「葡萄糖」の解説

ブドウ糖

血液中の主な糖成分で、グルコースともよばれます。これがエネルギー代謝の源です。

出典 あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)生活習慣病用語辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の葡萄糖の言及

【炭水化物】より

…デンプン,ショ糖,ブドウ糖など日常生活でもしばしば出会う化合物群であり,糖質とも呼ばれる。三大栄養素の一つ(炭水化物の栄養的側面については〈栄養〉の項目を参照)。…

【単糖】より

…アルデヒド基を含むものをアルドースaldose,ケトン基を含むものをケトースketoseと呼ぶ。日常生活で最もよく出会う単糖はD‐グルコースD‐glucose(ブドウ糖)でC6H12O6の分子式をもつ。この炭素原子は連鎖状に配列し,最も外側の一つがアルデヒド基となっている。…

※「葡萄糖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android