衆愚政治(読み)シュウグセイジ(英語表記)ochlocracy

翻訳|ochlocracy

デジタル大辞泉 「衆愚政治」の意味・読み・例文・類語

しゅうぐ‐せいじ〔‐セイヂ〕【衆愚政治】

自覚のない無知な民衆による政治ペリクレス死後のアテネ民主政治堕落を批判していった語。

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精選版 日本国語大辞典 「衆愚政治」の意味・読み・例文・類語

しゅうぐ‐せいじ‥セイヂ【衆愚政治】

  1. 〘 名詞 〙 自覚のない無知な民衆によって行なわれる政治。本来はペリクレス死後のアテネの政体をさす言葉で、プラトンアリストテレスはこれを多数貧民による支配とし、民主政の堕落した形態として批判した。ローマ時代ギリシアの歴史家ポリビオスも、堕落した民主政治をさして用いた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「衆愚政治」の意味・わかりやすい解説

衆愚政治
しゅうぐせいじ
ochlocracy

古代ギリシアの民主政ポリスにおいて、参政権を獲得した大衆が烏合(うごう)の衆と化して無定見な政策の決定を行った政治。その典型とされる紀元前5世紀後半のアテネでは、ペロポネソス戦争遂行にあたって、ペリクレス亡きあとクレオンをはじめとするデマゴゴスdemagogos(民衆指導者)が国政の最高決定機関である民会を牛耳(ぎゅうじ)って失策を重ね、やがて敗北に至った。こうした状況を厳しく批判したのがプラトンやアリストテレスらの思想家であり、彼らは、前5~前4世紀のアテネで実現された徹底した民主政治(民衆による支配)を下層の貧民による支配ととらえ、これを衆愚政治として批判したのである。同様の見解は、後のローマの歴史家ポリビオスの政治理論にもみられる。

[前沢伸行]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「衆愚政治」の解説

衆愚政治(しゅうぐせいじ)
ochlocracy

ギリシア語のオクロス(ochlos=大衆,群衆)とクラトス(kratos=力,支配)の2語から合成された政治学上の術語で,民主政治の堕落した変種をさす。前5世紀のアテネで,前429年にペリクレスが死んだのちの民主政治は,しばしば衆愚政治の典型的な例を示した。その場合にもクレオンなどの指導者がいたが,彼らは扇動政治家にすぎなかった,と評価されている。

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百科事典マイペディア 「衆愚政治」の意味・わかりやすい解説

衆愚政治【しゅうぐせいじ】

浮動的な大衆が政治に参加して無方向・無政策的な決定を行う政治。アリストテレスは民主政治の堕落形態としてとらえ,ポリュビオスも〈政体循環論〉の中で同じ見解をとっている。前5世紀末ペリクレス死後にクレオンら扇動政治家の指導したアテナイの政治が典型とされる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「衆愚政治」の解説

衆愚政治
しゅうぐせいじ
ochlocracy

無知な大衆によって政治が支配される堕落した民主政治
ペリクレス死後のアテネにおいて,利益や金銭によって民衆の歓心を集め,自己の野心を達しようとしたクレオンらの煽動政治家(悪い意味でのデマゴーゴス)が政権を握った時代は,その典型。ペロポネソス戦争をへてプラトン時代に引き継がれ,アテネ衰退の一因となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「衆愚政治」の意味・わかりやすい解説

衆愚政治
しゅうぐせいじ
mobocracy

腐敗した民主政治の形態の一つ。古代ギリシアにおいて,大衆の参加する民主主義は結局愚劣で堕落した政治に陥ると考えられた。なお,近代においても貴族主義者やエリート主義者は同じように考えてきた。

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