翻訳|ochlocracy
古代ギリシアの民主政ポリスにおいて、参政権を獲得した大衆が烏合(うごう)の衆と化して無定見な政策の決定を行った政治。その典型とされる紀元前5世紀後半のアテネでは、ペロポネソス戦争の遂行にあたって、ペリクレス亡きあとクレオンをはじめとするデマゴゴスdemagogos(民衆指導者)が国政の最高決定機関である民会を牛耳(ぎゅうじ)って失策を重ね、やがて敗北に至った。こうした状況を厳しく批判したのがプラトンやアリストテレスらの思想家であり、彼らは、前5~前4世紀のアテネで実現された徹底した民主政治(民衆による支配)を下層の貧民による支配ととらえ、これを衆愚政治として批判したのである。同様の見解は、後のローマの歴史家ポリビオスの政治理論にもみられる。
[前沢伸行]
ギリシア語のオクロス(ochlos=大衆,群衆)とクラトス(kratos=力,支配)の2語から合成された政治学上の術語で,民主政治の堕落した変種をさす。前5世紀のアテネで,前429年にペリクレスが死んだのちの民主政治は,しばしば衆愚政治の典型的な例を示した。その場合にもクレオンなどの指導者がいたが,彼らは扇動政治家にすぎなかった,と評価されている。
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