日本大百科全書(ニッポニカ) 「褐錫鉱」の意味・わかりやすい解説
褐錫鉱
かっしゃくこう
stannoidite
硫化鉱物の一つ。1969年(昭和44)加藤昭(あきら)(1931― )により岡山県金生(こんじょう)鉱山(閉山)から記載された新鉱物。それまで「褐色黄錫鉱」あるいは「六方黄錫鉱」とよばれて不完全に記載されていた相について完全なデータを出したもの。高温熱水鉱床、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)、ペグマタイト、ある種の含銅硫化鉄鉱床中に産し、黄銅鉱、斑(はん)銅鉱などと共存する。これまで兵庫県生野(いくの)鉱山(閉山)、同明延(あけのべ)鉱山(閉山)、栃木県足尾鉱山(閉山)、岡山県柵原(やなはら)鉱山(閉山)などから確認されている。和名は外観に基づく最初の仮の名称に、英名は「類似」を示す接尾語‐oidを「鉱物」を示す接尾語‐iteの前に入れて、黄錫鉱stanniteとの外観上の類似性を示したもの。2006年アルゼンチンからゲルマニウム(Ge)置換体が確認され報告されているが、鉱物学的諸性質が得られていない。
[加藤 昭 2016年2月17日]