褒姒(読み)ホウジ

デジタル大辞泉 「褒姒」の意味・読み・例文・類語

ほう‐じ【褒姒】

中国幽王の后。褒の国の人が献じたところからの名。幽王はなかなか笑わない后を笑わせるために平時にたびたび烽火のろしを上げて諸侯を参集させた。のちに、申侯が犬戎けんじゅうとともに周を攻めたとき、烽火を上げたが諸侯は集まらず、幽王は殺され、褒姒は捕虜になったという。

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精選版 日本国語大辞典 「褒姒」の意味・読み・例文・類語

ほう‐じ【褒&JIS888F;】

  1. 中国、西周の幽王の寵妃。褒国の人が献じたところからの称。幽王がなかなか笑わない褒姒を笑わせるために平時にたびたび危急を告げる烽火を上げて諸侯を集めた。その後犬戎に攻められた時、烽火を上げたが諸侯が集まらず、幽王は殺され、褒姒は捕えられて西周は滅んだ。生没年未詳。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「褒姒」の意味・わかりやすい解説

褒姒
ほうじ

中国古代の伝説上の女性。西周王朝最後の王である幽王の愛妾(あいしょう)。夏(か)王朝末期、朝廷に二匹の竜が現れてよだれを残して去ったが、このよだれは長く櫃(ひつ)の中にしまわれて西周王朝の厲(れい)王のときに開かれた。するとそのよだれはいつのまにか黒い亀(かめ)と化し、これに出会った幼女が妊娠してやがて生まれたのが褒姒であると伝えられている。のちに幽王の寵愛(ちょうあい)を受けるようになった彼女は、一度も笑ったことがないため、幽王は彼女を笑わせようと八方に手を尽くした。ところが褒姒は、あるとき敵の来襲を知らせるのろしがあがるのを見た諸侯が息せききって駆けつけるようすを見て、初めて笑った。このため王は、彼女を笑わせるためにたびたび嘘(うそ)ののろしをあげたので、ついに諸侯はこれを信じなくなり、本当に外敵が攻めてきたときにはひとたまりもなく西周王朝は滅んでしまった。そして幽王は驪山(りざん)の麓(ふもと)で殺され、褒姒は敵に連れ去られたという。紀元前771年の事件とされているこのエピソードは、夏王朝の妹喜(ばっき)や殷(いん)王朝の妲己(だっき)と並んで、女性が国を滅ぼすという考え方を伝説の形で表現したものであり、歴史的な事実と断定することはできない。

[桐本東太]

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改訂新版 世界大百科事典 「褒姒」の意味・わかりやすい解説

褒姒 (ほうじ)
Bāo sì

中国,西周の末王,幽王の妃。幽王は彼女を寵愛したために国を滅ぼしたとされる。夏王朝の末年,宮廷に出現した竜の“よだれ”が,周の厲王(れいおう)のころ玄黿(げんげん)に化して後宮の童女と交わり褒姒が生まれたという伝説が《国語》に見える。不祥としてすてられた彼女が褒国から周の宮廷に献上されたので褒姒とよばれるという。幽王は,彼女を寵愛して皇后申后(しんこう)を追い出し,笑わない彼女を笑わせるため,むやみに烽火(のろし)を上げた。その結果,犬戎が攻めこみ非常事を知らせる烽火を上げたときには救援の諸侯が集まらず,幽王は驪山(りざん)で犬戎に殺され,西周王朝は滅びたという。
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