日本大百科全書(ニッポニカ) 「西京雑記」の意味・わかりやすい解説
西京雑記
せいけいざっき
中国、前漢時代の首都長安(陝西(せんせい)省西安市)をめぐる逸話や逸聞を集めた書。前漢の劉歆(りゅうきん)撰(せん)とあるが、実は晋(しん)の葛洪(かっこう)の撰著。現行本は6巻。内容は地理風俗、諸制度にも及び、史料的価値は高い。とくに未央宮(びおうきゅう)、上林苑(じょうりんえん)、昆明池(こんめいち)などの記事は貴重であり、南粤王(なんえつおう)趙佗(ちょうだ)が海南島産のサンゴを献上したという逸話は、最近出土した文物と符合する。また宮廷をめぐる逸聞も豊富であり、賄賂(わいろ)を贈らなかったので醜い肖像を描かれ、そのため匈奴(きょうど)の単于(ぜんう)のもとに嫁せられたという王昭君の有名な伝説も、この書にみえる。
[尾形 勇 2018年5月21日]