親族間のへだたりの度合を表す単位。民法では,1世代を1親等として親等数を計算する(726条)。これを世数親等制という。直系血族間では両者の間の世代数がそのまま親等数になる。たとえば,親は1親等,祖父母は2親等の直系血族である。傍系の血族間では,一方から共通の始祖までさかのぼり他方に下るまでの世代数によって決める。たとえば,兄弟姉妹は2親等,おじ・おばやおい・めいは3親等,いとこは4親等の傍系血族となる。姻族については配偶者を起点として同様に計算する。たとえば,妻の父母は1親等,兄弟姉妹は2親等の姻族となる。また,夫と妻の連れ子との間は1親等の姻族,先妻の子と後妻との間も同様である。配偶者間には親等はない。このような計算方法はローマ法に由来するところから,ローマ法主義の世代親等制と呼ばれる。現代ではどこの国もこの方式を採用しているが,歴史的にはカノン法あるいは教会法主義の世代親等制という方式があった。両者の相違点は傍系血族の親等計算方法にある。ローマ法方式が共通の始祖までの世代数を合算するのに対し,カノン法方式は共通の始祖に至る世代数の多いほうをそのまま親等数とした。カノン法方式によれば,兄弟姉妹は1親等,おじ・おばやおい・めいは2親等,いとこも2親等の親族となる。日本では明治民法制定の際に,ローマ法方式を最も単純で合理的であるという理由で採用した。
以上述べた親等制と似たものに等親制がある。日本では明治民法制定によって廃止された過去の制度であるが,用語や観念に類似点があるので注意する必要がある。両者は親族の関係を表す尺度という点では共通点をもつが,制度の基礎となる思想や制度の内容はまったく異なるものである。等親制は中国の古制に由来し(宗法),日本固有の親族観念と融合して大宝令(701),養老令(718)にとり入れられ,その後消長はあったが,明治以後再構成されて1870年(明治3)の新律綱領の5等親制となった。等親制は〈家〉を尊重する,いわゆる旧〈家族制度〉的思想に基づく価値観によって親族の構成員の尊卑の地位を定め,これを個別的に列挙して示すという方法をとっていた。新律綱領では,1等親に属するものは父,母,夫,子など,2等親は祖父母,継母,兄弟姉妹,夫の父母,妻,妾など,3等親は曾祖父母,いとこ,異母兄弟姉妹など,4等親は夫の兄弟姉妹,兄弟の妻など,5等親は妻の父母女婿などである。夫は1等親,妻は2等親,しかも妻は妾と同列の2等親とされているなど,現代の個人の尊厳と両性の本質的平等(民法1条ノ2)という家族観念とはまったく異質のものであって,階級等親制とも呼ばれているものである。新律綱領は刑事法であって直接民事法的効果を定めたものではないが,そこに現れている家族思想は,近代以前における日本の家族制度を背景にしたものであり,明治民法の親族規定に大きな影響を与えたものであることに注意する必要がある。
→親族 →続柄
執筆者:武井 正臣
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親族関係の遠近度を計る単位。親族間の世数を数えて定める。傍系親族については、共同の始祖までの世数を合計して定める(民法726条)。
[高橋康之・野澤正充]
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