言志四録(読み)げんししろく

精選版 日本国語大辞典 「言志四録」の意味・読み・例文・類語

げんししろく【言志四録】

  1. 佐藤一斎著の「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録(てつろく)」の総称。→言志録

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「言志四録」の意味・わかりやすい解説

言志四録
げんししろく

江戸後期の儒学者佐藤一斎(いっさい)が42歳より80歳までの学道の所得を記した箚記(さっき)(随筆)、日録の類(たぐい)で、一斎の主著の総称。『言志録』『言志後録』『言志晩録』『言志耋録(てつろく)』の4書を合して『言志四録』という。一斎は林家(りんけ)の塾頭として朱子学を講じ、私的に陽明学を信奉した。陽明学を信奉することを公表することは、公人としての立場上はばかられたために、一斎は『言志四録』のおのおのを刊行する際に、元の稿本のなかから、私人として陽明学を信奉することを告白した箇条を抹消した。その結果、稿本『言志四録』に比べ、刊本精彩に乏しいことはいかにも否めない。しかし、一斎はなんといっても幕末期学術思想界の大御所であり、朱子学・陽明学を兼採した一斎の宋明(そうみん)性理学に関する学殖は当代随一であったから、『言志四録』の内容は江戸期儒学哲学の貴重な遺産であることにかつて異議はなかった。西郷隆盛(たかもり)は『言志四録』から101か条を抄出して座右の銘としたが、明治期以降にも広い読者を得た。

田公平]

『『日本思想大系46 佐藤一斎・大塩中斎』(1980・岩波書店)』『久須本文雄訳注『言志四録――座右版』(1994・講談社)』『川上正光訳注『言志四録1~4』(講談社学術文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「言志四録」の意味・わかりやすい解説

言志四録
げんししろく

文化 10 (1813) ~嘉永4 (51) 年にわたって佐藤一斎がみずからの哲学的思索を書きとめたノートのごときもの。漢文。『言志録』 (52歳) ,『言志後録』 (67歳) ,『言志晩録』 (78歳) ,『言志耋録 (てつろく) 』 (80歳) の4巻から成る。言志とは「志を言う」の意で,そのときどきに応じた箴言から成っているので体系性は欠いているが,自在な思考からの,人間の生き方の把握の核心に迫る叙述が少くない。特に,真の自己を確立するためには,人間個人をこえたものでありながら,また,人間の内心に具備されているともとらえられる「天に事 (つか) える」ことの必要を説いた,その所説は迫真力に富み,幕末の思想に多くの影響を与えた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「言志四録」の解説

言志四録
げんししろく

「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録(てつろく)」の総称。著者は佐藤一斎(いっさい)。1813~51年(文化10~嘉永4)頃までに順次成立。4巻。一斎が42歳からおよそ40年間にわたって筆録・刊行した語録で,日々の修養や心得,さまざまな事物の道理など,筆者の学問や体験からうまれた教訓が書かれている。西郷隆盛もこれを愛読して101カ条を抄録し座右の銘とした。「岩波文庫」「日本思想大系」所収。

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