日本大百科全書(ニッポニカ) 「言語類型学」の意味・わかりやすい解説
言語類型学
げんごるいけいがく
人間の言語を、その構造上の特性によって分類し、それぞれの言語の性格を規定していく理論またはその分類法をいう。この学問は、19世紀に盛んとなり、A・シュライヒャーに至り、世界の言語を(1)孤立語、(2)膠着(こうちゃく)語、(3)屈折語に三分するやり方が確立し、ウィルヘルム・フンボルトや20世紀のイェルムスレウによって、これに(4)抱合語を加える四分法が主張された。ただし、構造上の特性によって分けるといっても、この時代になされたことは、それぞれの言語の単語の外見上の形態を手掛りとするもので、単語の形や単語の結び付け方に関する厳密な構造上の規定とその理論がなかったために、きわめて表面的な分類法に終わってしまい、言語学者の知的な関心を失ってしまった。近年、言語の統辞法(単語の結び付け方)の研究が大いに進み、またそれぞれの言語の音形上の構造、音の結び付け方(音用論)、統辞構造との関連で考えられる意味の構造などの分析が、厳密な定式化をもって進められるようになって、言語類型学は新たなる生命を吹き返しつつある。同時に世界の言語のあり方に対する知識も格段に増えてきているので、類型の探究に地理と歴史の二面から同時に接近するようにもなりつつあり、この面からの照明も増しつつある。
[橋本萬太郎]
『E・サピーア著、泉井久之助訳『言語――ことばの研究』(1957・紀伊國屋書店)』▽『J・H・グリンバーグ著、安藤貞雄訳『人類言語学入門』(1973・大修館書店)』▽『橋本萬太郎著『言語類型地理論』(1978・弘文堂)』▽『Henrik BirnbaumProblems of Typological and Genetic Linguistics Viewed in a Generative Framework (1970, Mouton, The Hague, Paris)』