言語類型学(読み)げんごるいけいがく(英語表記)linguistic typology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

言語類型学
げんごるいけいがく
linguistic typology

言語のもつ形態や構造における類似と差異をもとにしていくつかのタイプを設定し,それらの関係の研究を通して言語の一般法則を探る学問分野。いかなる根拠に基づいていくつのタイプを設定するかという点で,学者の意見が異なるが,最も古くから知られているのは,孤立語膠着語屈折語の3分類,ないし抱合語を含めた4分類である。ただし,これらのタイプは理念として設定したもので,現実の言語はなんらかの点で2つ以上のタイプをあわせもっている。典型的な屈折語であるインド=ヨーロッパ語族のなかの英語においても,sing-sang-sung-songは屈折語的であるが,work-worked-workedや book-booksは膠着語的,Many Japanese speak English.は孤立語的であり,また,時代とともに孤立語的性格を強めている。このように,類型的分類は系統的分類とは異なる原理のうえに立つものであり,「進化」といった価値観ともなんの関係もないものである。近年では分類法も長足の進歩を見ており,特に語順や特徴相互の一般的関連性の研究などで一般言語学にも貢献しつつある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

言語類型学
げんごるいけいがく

人間の言語を、その構造上の特性によって分類し、それぞれの言語の性格を規定していく理論またはその分類法をいう。この学問は、19世紀に盛んとなり、A・シュライヒャーに至り、世界の言語を(1)孤立語、(2)膠着(こうちゃく)語、(3)屈折語に三分するやり方が確立し、ウィルヘルム・フンボルトや20世紀のイェルムスレウによって、これに(4)抱合語を加える四分法が主張された。ただし、構造上の特性によって分けるといっても、この時代になされたことは、それぞれの言語の単語の外見上の形態を手掛りとするもので、単語の形や単語の結び付け方に関する厳密な構造上の規定とその理論がなかったために、きわめて表面的な分類法に終わってしまい、言語学者の知的な関心を失ってしまった。近年、言語の統辞法(単語の結び付け方)の研究が大いに進み、またそれぞれの言語の音形上の構造、音の結び付け方(音用論)、統辞構造との関連で考えられる意味の構造などの分析が、厳密な定式化をもって進められるようになって、言語類型学は新たなる生命を吹き返しつつある。同時に世界の言語のあり方に対する知識も格段に増えてきているので、類型の探究に地理と歴史の二面から同時に接近するようにもなりつつあり、この面からの照明も増しつつある。[橋本萬太郎]
『E・サピーア著、泉井久之助訳『言語――ことばの研究』(1957・紀伊國屋書店) ▽J・H・グリンバーグ著、安藤貞雄訳『人類言語学入門』(1973・大修館書店) ▽橋本萬太郎著『言語類型地理論』(1978・弘文堂) ▽Henrik Birnbaum Problems of Typological and Genetic Linguistics Viewed in a Generative Framework (1970, Mouton, The Hague, Paris)』

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