訳文筌蹄(読み)やくぶんせんてい

精選版 日本国語大辞典 「訳文筌蹄」の意味・読み・例文・類語

やくぶんせんてい【訳文筌蹄】

江戸中期の語学書。初編六巻六冊、後編三巻三冊。荻生徂徠著。初編正徳四~五年(一七一四‐一五)、後編寛政八年(一七九六)刊。漢文実詞虚詞を列挙し、その語義用法差異を解説したもの。用例を付す。伊藤東涯の「用字格」「操觚字訣」とともに近世字書として屈指業績の一つ。後編は、竹里散人が荻生徂徠の口述を書きとどめて増補したもの。収録字数一六七五字。

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デジタル大辞泉 「訳文筌蹄」の意味・読み・例文・類語

やくぶんせんてい【訳文筌蹄】

江戸中期の語学書。荻生徂徠著。初編6巻は正徳5年(1715)刊、後編3巻は寛政8年(1796)刊。和文漢訳するときの手引き書で、漢文の実詞・虚詞を列挙し、その語義・用法などを解説したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「訳文筌蹄」の意味・わかりやすい解説

訳文筌蹄 (やくぶんせんてい)

荻生徂徠の著。6巻。《後編》3巻。漢字(中国古典語)の同訓異義の辞書。巻首の〈題言十則〉で漢語を理解する原則をのべ,〈俗語(中国語)〉の修得を基礎に,和漢の言語間の差異を明示し,〈虚字(動詞)・半虚字(形容詞など)〉の語義に対し,すでに硬直して久しい訓読を排し,新しい和訳を与えることで〈訳文の学〉の樹立を目ざした。内容は,作用字(動詞),形状字(形容詞・副詞)に相当する漢字1675個を同一の伝統的な和訓(よみ)のもとに分類し,平易な和語で字義を比較弁別し,〈連文(漢字熟語)〉や適切な用例を添えてそのいちいちに言葉としての意味を確定した。この点,日本の辞書史上における新機軸を開いたものといえる。初版は1715年(正徳5),以後の補修版も多い。《後編》は,三上孝軒(竹里山人)の補続,96年(寛政8)初版。758個の〈虚字〉などを収める。活版本(1908)では初編と合併されている。
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