古代末~中世に国衙の軽物(けいもつ)/(かるもの)(絹や布)徴収の業務を担った機関。調は〈みつぎもの〉の意。一般に平安後期以降の検田・収納などの国衙行政は所(ところ)により運営され,在来の郡司の諸機能を吸収しつつ独自の地方支配を展開していた。所にはこの調所のほか検田所,収納所,税所(さいしよ),田所(たどころ)などの機関が存在した。11世紀初頭の成立とされる藤原明衡の《新猿楽記》にもこうした国衙内の〈所〉の存在が指摘されている。国衙における調所の史料上の初見は,1058年(康平1)の丹波国高津郷司解である。その具体的機能については,その後の1124年(天治1)伊賀国黒田荘杣司等解によりある程度推察できる。すなわち〈見米(げんまい)をもって国庫に弁済し,或は軽物をもって調所に進済す〉と見えるのがそれである。これによれば当時の官物には見米あるいは准米などの税目があり,絹などの軽物も見米・准米に換算されるとはいえ,国衙では現実の収納品目により納入機関が定められており,調所は軽物を扱う機関として機能した。
→在庁官人
執筆者:関 幸彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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