警察法2条1項が示す警察の責務に依拠して,国の公安または利益にかかわる犯罪の取締り,ならびに各種社会運動にともなう不法事案の取締りを行うほか,災害の発生時における個人の生命,身体,財産の保護および公共の安全と秩序の維持に当たる警察活動として行われているのが警備警察である。警備警察は,具体的には,(1)警備情報活動,(2)警備実施,(3)警護,(4)警備犯罪捜査に分かれる。(1)は,国の安全と秩序の維持など警備警察に必要と考えるあらゆる情報の収集,分析である。(2)は,警備犯罪,災害および雑踏事故に対する総合的な警察活動であり,機動隊などの部隊出動がある。警備犯罪とは,国の公安または利益にかかわる犯罪および政治運動,労働運動その他社会運動(住民運動,消費者運動など)にともなって発生する犯罪とされている。災害は暴風,豪雨,豪雪,洪水,高潮,地震,津波などである。雑踏事故とは,集会や行事などにおける雑踏に起因する人身事故,物件破損事故,参加者間などの紛争などである。警備実施の基本事項は,警備実施要則(1963年公布の国家公安委員会規則)に定められている。(3)は,政府要人や日本滞在中の外国要人などの身辺の安全確保である。(4)は,情報分析に基づき警備犯罪捜査を具体的に行うことである。以上の各活動は相互に関連づけて行われている。警察庁における担当部局は警備局(公安第1・2・3課,警備課,外事課,調査課)である。都道府県警察本部においてもそれに対応する部局が設けられているが,とりわけ警視庁の陣容と活動能力がきわだっている(公安部,警備部)。警備警察に要する費用は国の負担である。
警備警察は,とりわけ60年代から70年代へと,通常の刑事犯罪に対処したり,市民サービスを行う市民警察あるいは普通警察に比べ,予算・人員ともに大増強され,情報通信網,装備,情報管理の充実と高度化が図られてきた。
警備警察は,他方で警備公安警察あるいは公安警察と呼ばれ,その問題性が指摘されている。そこではまず,警備警察の中心が公安維持,端的には特定の政治的秩序維持のための警備情報収集という予防的活動にあることが,警察の中立性や,警備警察の法的根拠(警察法2条1項)との関連で問題とされる。さらに,警備実施のあり方ともあいまって,国民の思想表現の自由など基本的人権の保障を危うくし,国民を監視・管理する活動にほかならないと批判されている。また,警備公安警察においては,一般的な市民的秩序維持のための諸法規が治安法規的に運用されていることについても注意が必要であるとの指摘もある。
執筆者:神長 勲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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