関東山地(読み)カントウサンチ

デジタル大辞泉 「関東山地」の意味・読み・例文・類語

かんとう‐さんち〔クワントウ‐〕【関東山地】

関東・中部両地方にかけて横たわる山地。北は碓氷うすい付近から、秩父ちちぶ山地丹沢山地に至る。

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精選版 日本国語大辞典 「関東山地」の意味・読み・例文・類語

かんとう‐さんちクヮントウ‥【関東山地】

  1. 関東地方中部地方の境をなす山地。東京都と神奈川、埼玉、群馬、長野、山梨の五県にまたがり、荒川、多摩川千曲川、笛吹川などを発する。

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日本歴史地名大系 「関東山地」の解説

関東山地
かんとうさんち

関東地方の西部から甲信地方に広がる。群馬・埼玉・東京・神奈川・長野・山梨の一都五県、南北ほぼ一三〇キロにまたがり、関東平野と中部諸盆地を振分けている。山地北東部の秩父山地と南部の丹沢たんざわ山地は、高尾たかお山麓を流れるかつら川によって分けられ、境界線は古くから八王子構造線(古期断層線)とよばれている。さらに西部には千曲ちくま川に沿う千曲川断層線があり、甲府盆地の北東縁で境されている。このように山地の周囲は大部分が断層によって分けられているので、地形は地塁状地塊とみられる。山地の北東部に秩父盆地、南部には秦野はたの盆地がある。山地の最高部は金峰きんぷ山と甲武信こぶし岳を結ぶ稜線付近で、最高峰は稜線中の北奥千丈きたおくせんじよう岳の二六一〇メートル、この一帯には二五〇〇メートル級の高山が連なる。

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改訂新版 世界大百科事典 「関東山地」の意味・わかりやすい解説

関東山地 (かんとうさんち)

関東平野の西にあり,中部地方の東縁部にまたがる山地。広義には丹沢山地を含めることもあるが,ここでは秩父山地を中心としその北に連接する山地域を含める。大菩薩嶺(2057m),甲武信(こぶし)ヶ岳(2475m),三国山(1834m),荒船山(1423m),物見山(1375m)をつらねる南北方向の主山稜は,西に偏してあり,その西斜面は急で短く,東斜面には東に長く延びる支山稜が平行している。山地の原形は西斜面が前面,東斜面が背面の傾動地塊と推定される。この主山稜は本州島の主分水界の一部をなし,西斜面は信濃川水系の千曲川の流域,東斜面は神流(かんな)川など利根川水系の流域である。甲武信ヶ岳から西に国師ヶ岳(2592m),金峰(きんぷ)山(2599m),東に古礼山(2112m),唐松尾山(2109m),雲取山(2017m)と東西方向につらなる山稜は,関東山地中最も高度が大きく,秩父山地の主部でもあり,その南斜面は多摩川,北斜面は荒川の源流域である。山地を構成する岩石は硬い秩父古生層,中生層,風化しやすい結晶片岩,石英セン緑岩などが核をなしている。

 山地の主部をつくる中・古生層の走向は西北西~東南東で,フォッサマグナを挟んで赤石山脈の地質走向と直交し対曲する関係にある。このことから山塊の中核部はフォッサマグナ形成の時期に東北東の走向をもつ赤石山脈から分離し,東南東方向へ変位漂動したものと解釈されている。山地の周縁部には新第三紀層,第三紀火山岩などが分布し高度の相対的に低い部分を構成する。水成岩はほぼ古生層の走向に平行するものが多い。山稜部は定高性,緩傾斜の部分が多いが,山腹斜面は急傾斜で中~大起伏の早壮年山形である。

 この山地は谷が深く起伏も大きいため,古来関東から中央高地(甲州,信州)を経て西日本(畿内)に向かう交通の障害となってきた。主稜線の鞍部には碓氷峠(中山道),内山峠,十石峠,雁坂峠,柳沢峠青梅街道)など,東西方向の主要交通路が通過するいくつかの峠があり,いずれも険阻な坂道が多くかろうじて車道が通じていた。国道18号線(中山道)に1971年碓氷バイパス,中央自動車道に77年笹子トンネルが通じてから道路の整備が進み,93年には上信越自動車道の藤岡~佐久平間,98年には国道140号に雁坂トンネルが開通して,急速に交通の障害は克服されてきている。また鉄道も中央本線,かつての信越本線(97年横川~軽井沢間廃止),97年開通の長野新幹線とも,この部分は急こう配でトンネルが多い。各河川の上流部の谷沿いの谷底や山腹には,谷奥まで集落が散在する。山腹斜面から山頂までほとんど樹林におおわれており,その中心部は秩父多摩国立公園となる。東斜面は近世以来東京を市場とする盛んな林業地(西川林業地)であった。最近は登山やハイキングなどの対象として親しまれている。また荒川流域には秩父盆地,山地東縁には小川,五日市,秦野の諸盆地があり,それぞれ山地内部の経済活動に中心的役割を果たしている市街地が存在する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「関東山地」の意味・わかりやすい解説

関東山地
かんとうさんち

関東地方の西部から中部地方の東部にかけて横たわり、群馬、埼玉、東京、神奈川、長野、山梨の1都5県にまたがる山地。北は碓氷川(うすいがわ)の谷の南方から、南は丹沢山地(たんざわさんち)にかけて広がり、東縁は南北方向に走る断層崖(がい)(八王子構造線)をもって関東平野に接し、西縁は千曲川(ちくまがわ)で限られている。南北約130キロメートル、東西約60キロメートルで、ほぼ長楕円(ちょうだえん)形をなしている。このうち、荒川、千曲川の源流地域は秩父山地(ちちぶさんち)、南のほぼ桂(かつら)川以南は道志山地(どうしさんち)、丹沢山地とよばれる。全体として、高い峰に深い谷が交互に連なる壮年期地形をなし、主分水界をなす三国(みくに)山(1834メートル)、甲武信(こぶし)ヶ岳(2475メートル)、大菩薩(だいぼさつ)嶺(2057メートル)を連ねる稜線(りょうせん)は西に偏り、主脈には雲取(くもとり)山(2017メートル)、笠取(かさとり)山(1953メートル)、破不(はふ)山(2318メートル)などがあり、ほかに南西部に金峰(きんぷ)山(2599メートル)、国師(こくし)ヶ岳(2592メートル)などの高峰がある。関東山地から流れる河川には、鏑(かぶら)川、神流(かんな)川、荒川、多摩川、千曲川、笛吹(ふえふき)川など大きなものが多い。山地の主体をなす地層は、古生層(秩父系、御荷鉾(みかぶ)系、三波川(さんばがわ)系、小仏(こぼとけ)系)、中生層(ジュラ系、白亜系)、第三紀層(御坂(みさか)層)であり、諸川の本・支流の谷壁に露出していてよく観察され、渓谷美をつくる所が少なくない。

 山地には、スギ、ヒノキなどの人工林や、ブナ、コナラ、クリ、カシなどの自然林がよく茂り、河川の流域、ことに神流川、荒川の流域は古くから良質の有用材を多く産出するので知られる。神流川、荒川、相模(さがみ)川、酒匂(さかわ)川には大規模なダムがいくつもつくられていて、水力発電や京浜の都市用水、工業用水の供給源をなしている。また秩父、奥多摩には良質の石灰石が豊富に埋蔵され、山麓(さんろく)にセメント工業がおこっている。

 秩父の三峰山(みつみねさん)や奥多摩の御岳山(みたけさん)、相模の大山(おおやま)は古くから修験道(しゅげんどう)の修行道場として知られた所で、いまも関東をはじめ東北、甲信、東海などの諸地域から信仰登山者が多く集まり、宿坊を中心とした信仰登山集落が発達している。関東山地を中心とする埼玉、東京、長野、山梨の1都3県にわたる山地地域は秩父多摩甲斐(ちちぶたまかい)国立公園に、南の丹沢、大山は丹沢大山国定公園に、また北部の碓氷(うすい)峠付近は上信越高原国立公園、その南は妙義(みょうぎ)荒船佐久高原国定公園に指定されている。それらは森林に覆われ、渓谷美が多く、稜線の自然歩道からの展望が広大なうえに、シカ、カモシカその他の深山性哺乳(ほにゅう)類がすみ、首都圏の青少年をはじめとして、広く登山、探勝、自然観察などに利用されている。

[浅香幸雄]


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百科事典マイペディア 「関東山地」の意味・わかりやすい解説

関東山地【かんとうさんち】

関東地方西部と中部地方東部にまたがる地塊山地。主要部の秩父山地と,南部の丹沢山地からなり,両山地は桂川断層谷で区切られる。荒川千曲川,相模川などの水源地をなす。
→関連項目群馬[県]相模原[市]東京[都]藤野[町]山梨[県]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「関東山地」の意味・わかりやすい解説

関東山地
かんとうさんち

関東地方西部から中部地方東部にかけて広がる山地。高峻な山地が多く最高は北奥千丈岳(2610m)。ほかに大菩薩嶺三峰山甲武信ヶ岳金峰山武甲山などの名山があり,荒川,多摩川,神流川(かんながわ),千曲川,笛吹川,桂川の源流域となっている。北限は鏑川の谷,南限は酒匂川谷,西限は千曲川谷,東限は藤岡から寄居,小川,越生,飯能,青梅,五日市,八王子を結ぶ階段状断層崖。埼玉,山梨県境部を特に秩父山地と呼び,古生層の水成岩,変成岩が多く,石灰岩資源に恵まれる。南部は丹沢山地新第三紀層からなる。ともに登山,キャンプ,渓谷探勝地として優れ,森林資源も豊富。北部は秩父多摩甲斐国立公園,南部は丹沢大山国定公園に属する。

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