日本大百科全書(ニッポニカ) 「中之条」の意味・わかりやすい解説
中之条(町)
なかのじょう
群馬県中西部、吾妻郡(あがつまぐん)にある町。1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)沢田(さわだ)、伊参(いさま)、名久田(なくた)の3村を合併。2010年(平成22)六合村(くにむら)を編入。暮坂(くれさか)峠を境に東半が旧中之条町地区、西半が旧六合村地区である。町の北部は新潟・長野との県境をなす1600~2000メートル級の山々が連なり、上信越高原国立公園に含まれる。これらの山地を水源として、吾妻川支流の四万(しま)川(東部)、白砂(しらすな)川(西部)などの諸河川が、南に流れ下っている。JR吾妻線、国道145、292、353、405号が通じる。中心市街は中之条盆地のほぼ中央、東流する吾妻川北岸の段丘面に位置し、胡桃沢(くるみざわ)を境に、西部を狭義の中之条町、東部を伊勢町(いせまち)とよぶ街村型谷口集落として発達した。江戸時代、吾妻川および支流の四万川、名久田川流域の諸村を後背地として1、6の日を市日に繭、生糸、薪炭などを扱う市場町として栄え、南西の原町(東吾妻町)の市場に対抗していた。現在は郡の中心としての機能をもち、商業のほか製糸、製材工業も行われる。渋川市との関係が深く、吾妻線中之条駅は四万温泉、沢渡温泉(さわたりおんせん)の玄関口になっている。四万温泉の奥にある日向見薬師堂(ひなたみやくしどう)、大道(だいどう)の富沢家住宅は国の重要文化財、また、洋風学校建築を利用した歴史民俗資料館は県の重要文化財に指定されている。闘茶を伝える「上州白久保のお茶講」は国指定重要無形民俗文化財。旧六合村地区には花敷(はなしき)、尻焼(しりやき)、応徳(おうとく)、湯の平(ゆのたいら)の各温泉や野反湖(のぞりこ)などの観光地があり、吾妻線長野原草津口駅からJRバスが通じている。南西部の赤岩地区は山村・養蚕集落として重要伝統的建造物群保存地区に選定(登録名「中之条町六合赤岩」)。面積439.28平方キロメートル、人口1万5386(2020)。
[村木定雄]
『『中之条町誌』全4巻(1976~1983・中之条町)』