貞信公記(読み)ていしんこうき

精選版 日本国語大辞典 「貞信公記」の意味・読み・例文・類語

ていしんこうき【貞信公記】

  1. 摂政関白太政大臣藤原忠平の日記貞信公諡号中間を欠くが、延喜七年(九〇七)から天暦二年(九四八)までが抄本で伝わる。一〇世紀前半の朝廷政情、特に、承平・天慶の乱を知るための基本史料。平安貴族の日記としては現存する最古のもの。貞信公御記とも。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「貞信公記」の意味・わかりやすい解説

貞信公記 (ていしんこうき)

太政大臣藤原忠平の日記。書名は忠平の諡号(しごう)にもとづく。今日伝わるのは《貞信公御記抄》と題する抄出本であり,《貞信公記》の本文をそのまま伝える正記の存在は知られていない。《九暦》などとともに10世紀初頭の数少ない日記として貴重。天理図書館に鎌倉時代初期書写の《貞信公御記抄》が伝わる。これはもと20巻あったことが知られるが,今は907年(延喜7)より948年(天暦2)のうちの10巻分を残すのみ。また《西宮記》《北山抄》などに逸文が多く見える。《続々群書類従》《大日本古記録》《天理図書館善本叢書》所収
筆者

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「貞信公記」の意味・わかりやすい解説

貞信公記【ていしんこうき】

太政(だいじょう)大臣藤原忠平(ただひら)の日記。書名は忠平の(おくりな)にちなむ。現存するのは《貞信公御記抄(ぎょきしょう)》という抄出本で,《貞信公記》の本文そのものを伝えるものは知られていない。《西宮記(さいきゅうき)》や《北山抄(ほくざんしょう)》などに多くの逸文(いつぶん)が見える。10世紀前半の日記として《九暦(きゅうれき)》などとともに貴重。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「貞信公記」の意味・わかりやすい解説

貞信公記
ていしんこうき

平安時代の公卿(くぎょう)の日記。筆者は関白太政(だいじょう)大臣藤原忠平(ただひら)。諡(おくりな)の貞信公によりこの称がある。原形はいまはなく、現存のものは『貞信公記抄』であり、907年(延喜7)から948年(天暦2)にわたる。抄本は忠平の子実頼(さねより)(小野宮(おののみや))によってつくられたという。『後二条師通(ごにじょうもろみち)記』に、『貞信公記』が「小野宮抄出」と書かれていることも、その証拠である。本記がなく、抄出本のみであることが遺憾であるが、朱雀(すざく)天皇時代の摂関政治発展と確立の時勢、とくに承平(じょうへい)・天慶(てんぎょう)の乱に関して知ることができる貴重な資料。天理図書館所蔵の九条(くじょう)家本が唯一の古写本で、鎌倉初期の書写。『大日本古記録』に収められ、複製本に「天理図書館善本叢書(そうしょ)」がある。

山中 裕]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貞信公記」の意味・わかりやすい解説

貞信公記
ていしんこうき

『貞信公御記』『貞御記』『貞公記』『貞記』ともいう。平安時代中期の貴族政治家藤原忠平の日記。忠平は,死後,貞信公と諡されたので,この名がつけられた。原本具注暦 (ぐちゅうれき) に書込まれていたものらしいが,伝わっていない。現在知られる記事は,子の実頼が原本から重要事項を抜書きした『貞信公記抄』の古写本と,諸書に引用された日記の部分とから,延喜7 (907) 年から天暦2 (948) 年までのものが知られている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「貞信公記」の解説

貞信公記
ていしんこうき

平安中期,関白藤原忠平の日記
現存する平安貴族最古の日記で,907〜948年の分が現存。延喜・天暦の治や,承平・天慶の乱についての貴重な史料である。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の貞信公記の言及

【藤原忠平】より

…しかし朝儀・故実に明るく,彼の説は子息らに継承され,後世の規範となった。日記《貞信公記》は907‐948年(延喜7‐天暦2)の抄本が伝わり,貴重な史料である。彼の口伝・教命を伝える《貞信公教命》は現存しない。…

※「貞信公記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android