朱雀(読み)しゅじゃく

精選版 日本国語大辞典 「朱雀」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐じゃく【朱雀】

(「しゅしゃく」とも)
[1] 〘名〙
① 南方の神。中国古代に四方に配した、東方の青龍、西方の白虎、北方の玄武とともに四神の一つ。鳥の形をする。朱鳥。すざく。〔運歩色葉(1548)〕
② 「しゅじゃくき(朱雀旗)」の略。〔呉子‐治兵〕
③ 地相、家相の用語。理想的な地形として、家の前方(南)に窪地のあることをいう。朱鳥。→四神相応
※高野本平家(13C前)五「此地の躰をみるに、左青龍、右白虎、前朱雀(シュジャク)、後玄武、四神相応の地也」
④ イバラ科の落葉高木。サトザクラの園芸品種で、紅色、重弁の花を開く。観賞用植物。
[2]
[一] 中国の天文学で二十八宿のうち、南方にあたる七宿(井・鬼・柳・星・張・翼・軫)の総称。南方七宿の星が全体として鳥形であると考えたところから、この名を生じたという。朱鳥。〔淮南子‐天文訓〕
今昔(1120頃か)二九「羅城門の下に立隠れて立てりけるに、朱雀の方に人重(しげ)く行ければ」
[三] 「しゅじゃくおおじ(朱雀大路)」の略。〔伊京集(室町)〕
[四] 京都の朱雀通(千本通)七条付近の称。寛永一七年(一六四〇)、近くに島原遊郭が置かれた。朱雀村。西朱雀。七条朱雀。
※浮世草子・好色一代男(1682)六「丹波口の初朝、小六が罷出て、御慶と申納、朱雀(シュシャク)野辺近く」
[五] 天武天皇の世に用いられたという年号。建元の年も、はっきりせず、朱鳥に同じとも、または、朱鳥を誤ったものともいわれる。
※続日本紀‐神亀元年(724)一〇月丁亥朔「詔報曰、白以来、朱雀以前、年代玄遠、尋問難明」
[補注]「しゅじ(し)ゃく」のほかにも多くの形が見られ、漢字で書かれたものなど、その読みを決めることはむずかしい。中古には「すさく」「すさか」の形が、中世近世には「しゅじ(し)ゃく」「しゅざ(さ)く」「しゅざ(さ)か」などの形が見られる。今日では、平城・平安京に関することには一般に「すざく」、朱雀通、朱雀村など当時のことには「しゅじ(し)ゃか」と言い分けることが多い。→すざく(朱雀)

しゅ‐じゃか【朱雀】

(「しゅしゃか」とも)
[一] 「すざくおおじ(朱雀大路)」の中世、近世における呼称
※高野本平家(13C前)二「西の朱雀(シュシャカ)を南にゆけば、大内山も今はよそにぞ見給ける」
京雀(1665)六「尼寺の西朱雀(シュジャカ)のすゑに朱雀権現の社あり」
[三] 「しゅじゃく(朱雀)(二)(四)」の中世、近世における呼称。
評判記・朱雀遠目鏡(1681)上「いかなる人のふみ初し朱雀(シュシャカ)の野辺の細道にや」

す‐ざく【朱雀】

[1] 〘名〙 =しゅじゃく(朱雀)(一)
[2]
[一] 「すざくもん(朱雀門)」の略。
※続日本後紀‐承和三年(836)七月戊子「雷雨殊切。人皆讋伏。至于夜分朱雀柳樹

す‐ざか【朱雀】

催馬楽(7C後‐8C)浅緑「浅緑 濃い縹(はなだ) 染めかけたりとも 見るまでに 玉光る 下光る 新京朱左可(サカ)のしだり柳」
[補注]→「しゅじゃく(朱雀)」の補注

しゅ‐さか【朱雀】

す‐じゃく【朱雀】

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デジタル大辞泉 「朱雀」の意味・読み・例文・類語

すざく[人工衛星]

平成17年(2005)7月に打ち上げられたX線天文衛星ASTRO-EⅡアストロイーツーの愛称。JAXAジャクサ(宇宙航空研究開発機構)があすかの後継として、また、平成12年(2000)2月に打ち上げられ軌道投入に失敗したASTRO-Eの代替機として開発された。高感度の撮像装置を搭載し、従来のX線望遠鏡に比べ格段に幅広いエネルギー領域(700キロ電子ボルトまで。従来は10キロ電子ボルト程度)のX線、γガンマを観測可能にした。宇宙の構造と進化に関わる非常に遠方の銀河団からのX線やγ線、ブラックホール候補天体や活動銀河核の観測を行った。平成27年(2015)8月に運用終了を発表。

すざく【朱雀】[地名]

京都下京区の地名。千本通りの西側、七条通りの北側の地。
朱雀大路おおじ」の略。

す‐ざく【×雀】

四神しじんの一。天上南方の守護神で、鳳凰ほうおうなどの鳥の形に表す。朱鳥。しゅじゃく。
サトザクラの一品種。すじゃく。しゅじゃく。

すざく【朱雀】[年号]

天武天皇朝にあったとされる逸年号朱鳥しゅちょうの異称と考えられる。しゅじゃく。

しゅ‐じゃく【朱×雀】

すざく(朱雀)

す‐じゃく【×雀】

すざく(朱雀)

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普及版 字通 「朱雀」の読み・字形・画数・意味

【朱雀】しゆじやく

南方の星宿。〔三輔黄図、三、未央宮〕・白虎・朱雀・玄武は天の四靈なり。以て四方を正す。王、宮闕殿閣を制(つく)るに、法を取る。

字通「朱」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「朱雀」の意味・わかりやすい解説

朱雀
すざく

中国古代の想像上の動物。普通は玄武(げんぶ)、青竜(せいりゅう)、白虎(びゃっこ)とともに四神(しじん)という形で一組にされ、おのおのが東西南北の各一方を分担して守護するものと考えられた。朱雀は南方の守護をつかさどるが、朱雀と南方との結び付きは、五行説が五色を中央と四方に割り当てたとき、赤を南方の色にしたことに由来しており、四神の信仰は五行説の影響を受けながら戦国時代ごろに成立したと思われる。その後、四神の信仰は中国のなかで盛行しただけでなく、古代の朝鮮や日本にも伝播(でんぱ)した。

[桐本東太]


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知恵蔵 「朱雀」の解説

朱雀

すざく」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

占い用語集 「朱雀」の解説

朱雀

火行に属し、時では夏、方角では南に対応。陽気・旺盛ることを司る神で、文書・口舌・訴訟などをあらわす。

出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「朱雀」の解説

朱雀
すざく

四神(しじん)

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の朱雀の言及

【元号】より

…こうして年号は律令制度の確立とともに公式紀年として認められることとなり,以後断絶することなく現代に及んでいる。なお,白雉から大宝に至る7世紀の後半に白鳳,朱雀の年号があったと言われるが,白鳳は白雉の,朱雀は朱鳥の別称と考えられる(これには異説もある)。 文武天皇から平成の今上天皇に至るまで,代数にして84代(北朝を加えると89代)の間に年号は244(このうち北朝の年号は17)を数える。…

【四神】より

…中国の古代に発祥する四つの方位を表す象徴的動物。東を青竜(蒼竜とも),南を朱雀(しゆじやく)(〈すざく〉ともいう),西を白虎,北を玄武で表す。戦国時代前期の,曾侯乙墓出土の漆器の蓋に,北斗や二十八宿とともに竜と虎とが描かれて,四神の観念の基礎となるものが天空上の星座と結びついて,すでに生まれていたことを示す。…

【鳳凰】より

…天下太平の瑞徴としての鳳凰は,特に漢代以降盛んに出現するようになり,その出現に際して改元が行われたりもする。なお《大戴礼記》(《大戴礼》)に,鳥類は360種から成るが,その長(かしら)が鳳凰だとあるように,鳳凰の基本的な性格は超越的な鳥ということにあり,《礼記(らいき)》では四霊の一つに数えられ,四神の内の朱雀の内にその性格が受けつがれていることは,漢代の緯書が鳳凰を火精だとしていることからも逆にうかがわれよう。また鳳は竜と組み合わされて,竜が男性を,鳳が女性を象徴する。…

【四神】より

…中国の古代に発祥する四つの方位を表す象徴的動物。東を青竜(蒼竜とも),南を朱雀(しゆじやく)(〈すざく〉ともいう),西を白虎,北を玄武で表す。戦国時代前期の,曾侯乙墓出土の漆器の蓋に,北斗や二十八宿とともに竜と虎とが描かれて,四神の観念の基礎となるものが天空上の星座と結びついて,すでに生まれていたことを示す。…

【道教】より

…〈太極〉はもともと《易》の哲学用語),さらにまた同じくこの年の夏4月には伊勢神宮に多紀皇女らを派遣しているが,伊勢神宮の〈神宮〉という言葉もまた祖廟を意味する中国古代の宗教用語であり,道教と密接な関連をもっていることが,そのことを有力に裏づけるであろう。 なお,天武天皇が死を前にして,7月にあわただしく改元している〈朱鳥〉の年号も道教の文献《淮南子(えなんじ)》などに見える言葉で,朱雀と同じく南方の赤い火すなわち生命の充実もしくは蘇(よみがえ)りを象徴し,天皇が病気で〈体不安〉であったためにこの処置が取られたものと見られる。天武の陵墓は大内陵とよばれて道教の神学用語〈大内〉を用いており,また持統の治世に造営された藤原宮が,中国の皇都にならって全面的に道教における皇都の宗教哲学(太極紫宸,陽明,日華月華。…

【鳳凰】より

…天下太平の瑞徴としての鳳凰は,特に漢代以降盛んに出現するようになり,その出現に際して改元が行われたりもする。なお《大戴礼記》(《大戴礼》)に,鳥類は360種から成るが,その長(かしら)が鳳凰だとあるように,鳳凰の基本的な性格は超越的な鳥ということにあり,《礼記(らいき)》では四霊の一つに数えられ,四神の内の朱雀の内にその性格が受けつがれていることは,漢代の緯書が鳳凰を火精だとしていることからも逆にうかがわれよう。また鳳は竜と組み合わされて,竜が男性を,鳳が女性を象徴する。…

※「朱雀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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