貧者の一灯(読み)ひんじゃのいっとう

  • の 一灯(いっとう)
  • ひんじゃ
  • 貧者

精選版 日本国語大辞典の解説

貧者が苦しい生活の中でやりくりして神仏に供える一つの灯明(とうみょう)。金持の供える万灯よりも尊く、功徳があるとされ、まごころの尊いことのたとえにいう。長者の万灯より貧者の一灯。
※国民経済講話‐乾(1917)〈福田徳三〉六章「それは全体から言へば誠に僅かな貢献ですけれ共、所謂貧者(ヒンシャ)の一燈(トウ)でそれ丈けの富は作って居ります」

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ことわざを知る辞典の解説

貧者が苦しい生活の中から苦心して神仏に供える一つのとうみょう。金持ちの供える万灯よりも尊く、功徳があるとされる。転じて、金額は少ないが心を込めた寄付金など、宗教とかかわりがないものについてもいう。

[使用例] 窮した揚げ句の果てに、こんなものを持ち出したのですから、そこのところは貧者一灯の心意気にめんじて、面白くもないだろうけれど見てやって下さい[太宰治*小さいアルバム|1942]

〔異形〕貧の一灯/長者の万灯より貧者の一灯

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故事成語を知る辞典の解説

貧しい者の心のこもったわずかの寄進。形式よりも真心が大切であるということのたとえ。

[使用例] その小額の喜捨が――たとい貧者の一灯という、美くしい讃辞があるにせよ――現代に於ては、最早何程の社会的効果をも挙げ得ないものであると考えて居るのでした[与謝野晶子*食糧騒動に就て|1918]

[使用例] 富者の万灯より貧者の一灯ということがある〈略〉これは貧者の信心こそ仏の意志にかなうという意味らしいが[山本周五郎*赤ひげ診療譚|1959]

[由来] 「じゃ王授決経」に見える話から。紀元前五世紀ごろのインドでのこと。マガダ国の阿闍世王は、あるとき、仏になれるように、お布施として、おんしょうじゃから王宮までの道に何万もの灯りをともしました。それに感激したある貧しい年老いた女性は、ものごいをしてわずかなお金を手に入れ、自分の食べものの代わりに油を買って、たった一つだけ、灯りをともします。すると、王の灯りの中には消えてしまったものがあったのに、彼女の灯りは、夜明けまで消えなかったのでした。

[解説] ❶「新約聖書」にも「富める者の天国に入るは難し」とあるように、お金持ちに厳しく、貧乏人にやさしいのが宗教のあるべき姿。この話では、そのことを美しい灯りのイメージで語っているところが、味わいどころです。❷現在では、宗教的な寄進に限らず、さまざまな寄付の場面で使われます。また、金銭的な寄付ではなく、「真心を込めて何かをする」ことを表すために使われることもあります。

〔異形〕貧の一灯/貧女の一灯/長者の万灯より貧者の一灯。

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世界大百科事典内の貧者の一灯の言及

【万灯会】より

…その他四天王寺や中尊寺,北野天満宮などでも行われた。《阿闍世(あじやせ)王受決経》には長者の万灯より貧者の一灯の功徳を強調しているが,江戸時代には庶人に1灯の献灯を勧めて万灯会が行われた。盂蘭盆(うらぼん)会の精霊の送り火なども,この万灯会と関係が深いといわれている。…

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