銀行が信用を供与する業務(与信業務)の総称。具体的には,銀行法上の勘定科目による分類では手形貸付け,証書貸付け,当座貸越し,手形割引,コール・ローン(コール市場),支払承諾,貸付有価証券をさす。一般には,このうちの手形貸付け,証書貸付け,当座貸越し,手形割引の四つを貸出しという。これから手形割引を除いた三つを貸付けというが,これを貸出しという場合もある。貸出しは銀行業務の基本業務の一つであり,貸出金は銀行の運用資産のなかで中心的位置を占めている。貸出しは,貸出しの5原則(安全性,収益性,流動性,公共性,成長性)に沿い,取引先の実態を十分に審査したうえで,実行される。
借用証書の代りに,貸出先が銀行を受取人として振り出す約束手形を見合いにして融資する貸付形式のことで,手形割引とともに銀行の最も基本的な融資形式である。貸付金は,支払期日までの利子を額面金額から差し引いて渡される。手形貸付けは法律的には金銭消費貸借契約であり,手形貸付けを実行することにより,銀行は金銭消費貸借契約に基づく債権と手形上の債権の両方を有することになる。したがって銀行は,このうちいずれかの権利を行使して債権を回収することができる。手形貸付けは,主として短期の貸出し時に利用され,手形期間は通常2~3ヵ月という短期間のものが多い。しかし書換継続により実質的に長期貸出しとなっているものもある。
債権額,弁済期,利率などの借入条件が記入された借用証書を見合いに,銀行が融資する貸付形式のこと。法律的には手形貸付けと同様に金銭消費貸借契約だが,銀行が融資をするときに手形を徴求しないため,手形上の債権は発生しない。一般に,設備資金,長期運転資金等の長期貸出しや,手形の振出しが困難な地方公共団体への融資の場合に利用されることが多い。手形上の債権がないことから,土地建物等不動産担保をとることが多い。返済方法,利払方法とも,1ヵ月ごと,3ヵ月ごと,6ヵ月ごと等,自由に銀行,取引先の間で決定できる。
当座勘定取引に付随してなされる契約で,取引先が当座預金の残高を超えて小切手を振り出した場合,一定金額までは銀行が貸出しを認めて支払に応ずるという契約である。法律的には当座貸越契約の締結は金銭消費貸借契約の予約であり,実際に取引先が当座預金残高を超えて小切手を振り出し,これが銀行で支払われた場合に,金銭消費貸借取引が成立するものと考えられる。当座貸越しは,取引先にとってはいつでも自由に必要な金額だけ借りられるため,非常に便利であるが,銀行にとっては,資金計画がたてにくく,管理も繁雑であるうえ,利息が後取りである等の理由から,あまり望ましいものではない。したがって利率も手形割引,手形貸付け等より高率で,定期預金や有価証券等を根担保でとることが多い。
手形所持人の依頼により,銀行がその手形の支払期日前に,期日までの利息を差し引いて買い取ることで,単に割引ともいう。手形金額から利息部分が天引きされることから,割引という言葉が生まれた。手形割引は,銀行が有価証券として手形を買い取るものであり,金銭消費貸借契約の借用証書の代りに手形を徴求する手形貸付けとは根本的に性格が異なる。割引の対象となる手形には商業手形,銀行引受手形,荷付為替手形があるが,大部分は商業手形である。商業手形の場合,手形の背後には商品売買という裏付けがあるため,その支払期日には決済される確実性が高く,期間も2~3ヵ月程度の短期であるので,銀行の与信業務としては最も望ましく,かつ重要なものといえる。したがって利率も貸出しのなかで最も低い。手形割引の利率を割引料という。手形割引の法律的性質については,手形を担保とした金銭消費貸借とする説と,有価証券である手形の売買とする説の2説があるが,今日では売買説の立場が有力であり,この説にたてば金銭消費貸借契約の借用証書の代りに手形を徴求する手形貸付けとは根本的に性格を異にする。なお全国銀行協会連合会(全銀協)は,〈銀行取引約定書ひな型〉のなかで,売買説を採用することを明示している。
執筆者:五十嵐 力
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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