銀行と取引先との間の当座貸越契約などのように、継続的な取引関係がある場合に、契約期間中に発生し消滅する不特定多数の債権の残額をつねに担保しようとするもの。根抵当、根質(ねじち)、根譲渡担保、根保証の総称。通常の担保が、特定の債権のみを対象とし、それが消滅すれば担保も消滅するのと異なり、個々の債権の消長によって影響を受けない点に特徴がある。ところで、このような根担保は、たとえば銀行が特定の顧客に繰り返し金銭を貸し付ける場合には、そのたびに担保権を設定する必要がないという利点を有する。
2004年(平成16)12月公布(2005年4月施行)の民法の現代語化に際しては、根保証契約のうちの貸金等根保証契約について、保証人の責任を制限する旨の規定が置かれた(民法465条の2以下)。これは、根保証契約が保証人に過大な責任を負わせることがあり、その責任を制限する必要があったことによる。
[高橋康之・野澤正充]
通常の担保においては人的担保(保証債務など)であれ物的担保(抵当権,質権など)であれ,被担保債権はその成立原因,種類,額などいずれも特定されており,その発生,存続,消滅が担保権の発生・存続ないし実行・消滅の前提となっている。この意味でいわゆる付従性(〈担保物権〉の項参照)が支配している。これに対し,銀行とその取引先,卸商と小売商との間の継続的取引関係から発生する債権の担保のように,将来発生する可能性のある不特定多数の債権を担保するものを総称して根担保といい,実際には根保証,根抵当,根質,根譲渡担保等の形でその有効性が認められている。根担保においては一般に前記の付従性は大幅に緩和されており,被担保債権は担保権実行の際に特定されればよいと解されている。ただし,やや細かくみると例えば,根保証においては判例上,債権の範囲・極度額,保証期間等の定めのないいっさいの債権についての保証(包括根保証)も有効と解されており,この点根抵当と異なることに注意すべきである。
執筆者:東海林 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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