ある時期のある社会をとり,労働者の賃金に支払われる資本部分としての賃金基金は,一定額に限定されていると主張する賃金学説。19世紀のイギリスの経済学者J.S.ミルによって最も典型的に主張された。この学説に従えば,労働者一人一人が受け取る賃金は,所与の賃金基金を雇用労働者総数で割った額にしかなりえない。それゆえ,労働組合運動による一部労働者の賃上げは,必ず他の労働者の賃金引下げを招くものとみなされる。したがって,この学説は賃上げを求める労働運動をむだなものとして否定する資本家の立場を支える理論として役立てられた。なお,晩年にはミルも賃金基金の伸縮性を認めて,この点での自説をかなり大きく改めている。
→賃金
執筆者:伊藤 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…賃金形態賃金構造賃金体系
【理論・学説】
学説史上の主要な賃金決定理論は,大きく分けると四つある。(1)18世紀後半から19世紀前半において支配的であった賃金生存費説,(2)19世紀中葉の賃金基金説,(3)19世紀から20世紀の交に現れた限界生産力説,(4)そして主に20世紀に入ってから主張されはじめた交渉力説,の四つである。これら4学説は決して相互に排反的ではなく,賃金決定の異なった側面に注目しており,むしろ相補う性質のものと考えたほうがよいであろう。…
※「賃金基金説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新