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賃金基金説 ちんぎんききんせつwage-fund theory

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

賃金基金説
ちんぎんききんせつ
wage-fund theory

T.R.マルサスに端を発し,J.S.ミルによって定式化された賃金理論。賃金として支払われる資本部分 (基金) は,富の蓄積と生産力の向上によって増大するものの,一定の社会状態においては一定額であり,賃金とはそれを全労働者人口で割った額に等しいという説。この説の弱点は基金をあらかじめ固定化していること,また基金の額を何から導き出し決定するのかということに,なんの解明も与えられていないことである。しかしこの説に依拠して,一定の社会状態においては労働者人口が減らないかぎり賃金は高まらないということから産児制限奨励論が生れたり,また賃金闘争を闘っても労働者総体としてみれば無意味であるということを根拠として労働組合無用論なども生れた。のちになって基金が一定であるとしたのは根拠がなかったとしてミルはこの説を放棄したが,他方では E.ベーム=バウェルクらが新たな形態で再び提唱した。

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デジタル大辞泉の解説

ちんぎんききん‐せつ【賃金基金説】

J=S=ミルによって完成された賃金理論。ある社会において賃金の支払いに充てられる賃金基金は一定であり、賃金基金の増大または労働者数の減少なしには賃上げは不可能という説。

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百科事典マイペディアの解説

賃金基金説【ちんぎんききんせつ】

一定の時期,一定の社会では労働者に支払う資本部分(賃金基金)は一定額であるから,賃金はそれと労働人口との関係できまり,労働人口が減少しない限り賃金上昇はあり得ない,という説。

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世界大百科事典 第2版の解説

ちんぎんききんせつ【賃金基金説】

ある時期のある社会をとり,労働者の賃金に支払われる資本部分としての賃金基金は,一定額に限定されていると主張する賃金学説。19世紀のイギリスの経済学者J.S.ミルによって最も典型的に主張された。この学説に従えば,労働者一人一人が受け取る賃金は,所与の賃金基金を雇用労働者総数で割った額にしかなりえない。それゆえ,労働組合運動による一部労働者の賃上げは,必ず他の労働者の賃金引下げを招くものとみなされる。したがって,この学説は賃上げを求める労働運動をむだなものとして否定する資本家の立場を支える理論として役立てられた。

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大辞林 第三版の解説

ちんぎんききんせつ【賃金基金説】

J = S =ミルなどのイギリスの古典学派が唱えた賃金理論。社会で賃金として支払い可能な基金は一定であり、労働者全体の受け取る賃金総額はその枠内で固定されているとする説。

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世界大百科事典内の賃金基金説の言及

【賃金】より

賃金形態賃金構造賃金体系
【理論・学説】
 学説史上の主要な賃金決定理論は,大きく分けると四つある。(1)18世紀後半から19世紀前半において支配的であった賃金生存費説,(2)19世紀中葉の賃金基金説,(3)19世紀から20世紀の交に現れた限界生産力説,(4)そして主に20世紀に入ってから主張されはじめた交渉力説,の四つである。これら4学説は決して相互に排反的ではなく,賃金決定の異なった側面に注目しており,むしろ相補う性質のものと考えたほうがよいであろう。…

※「賃金基金説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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