日本大百科全書(ニッポニカ) 「身体計測」の意味・わかりやすい解説
身体計測
しんたいけいそく
body measurement
anthropometry
人体の大きさを計量すること。人類学などでは、人の成長を追跡したり、人種など各種集団の体格や体型を比較したりするために、身体各部の長さ、幅、周囲長、重量などを計測したが、初めは各人各様の方式で行ったので、結果の比較がむずかしかった。1914年にドイツの人類学者のR・マルチンは各種計測法を集大成し、規準や方式を統一化して、人類学教科書を著した。今日、これが国際的に広く採用されている。
身体計測は生体計測、頭骨計測、骨格計測に分けられる。このうち、後二者は骨格についてなされるが、ともに時間をかけて厳密かつ子細に計測できる。生体計測は人体の形態と機能を結び付けて研究するのに便利であるが、危険を避けて迅速に行う必要があり、また計測誤差を生じやすい。計測にあたって生体や骨の方向を定め、また計測基準点を設けるが、生体と骨の計測値を関連づけるため、皮膚の上から触れられる骨の部分を重視する。生体では、もっとも人類的な特徴である直立姿勢の下に測定する。身長はそのような姿勢における最大値であり、しばしばその個人の体の大きさを表す代表値となる。人体測定のために、それぞれ部位や用途に応じて各種計測器や骨の固定器が考案されている。さまざまな大きさと形態を測るノギスや角度計、巻尺などがあるが、それらに加えて一定の圧を与えて測る皮厚計、X線や超音波を利用した測定器、モアレ縞(しま)による立体的な測定法などが用いられている。コンピュータと直結した測定器はとくに威力を発揮している。今日では、身体測定は臨床医学、人間工学、体育学など多くの分野で応用され、新しい方法が開発されている。
[香原志勢]