中国,明末の農書。政治家であり科学者でもあった徐光啓の主著の一つ。60巻。1639年(崇禎12)刊。内容は,農本(農家諸書の総括)3巻,田制(井田ほかの歴代の田制)2巻,農事(農作業および授時,占候)6巻,水利(泰西水法が2巻をしめる)9巻,農器(農具)4巻,樹芸(穀,蓏(ら),蔬,果の4目に分類)6巻,蚕桑4巻,蚕桑広類(広類とは木綿,蔴苧の繊維作物)2巻,種植(竹,木,茶,そして薬用植物)4巻,牧養(養魚,養蜂を含む)1巻,製造(常需の食品の製法)1巻,荒政(飢饉対策。備荒論,救荒用の草木類,野菜譜に分かれる)18巻からなる。歴代の農書文献250種近くが,自家薬籠のものとして駆使されており,中国農書の集大成というにふさわしい。礼部尚書までのぼりつめた徐光啓は,書名が示すように治国治民の農政を最大の主題として本書を著した。救荒作物としての甘薯,経済作物としての木綿,唯風土論を排した新品種の積極栽培,蝗害(こうがい)の科学的対策などの記述は彼の創意が十分に示されている。またキリスト教信者でもあり,マテオ・リッチ(《幾何原本》はリッチとの共訳)をはじめとする宣教師との接触によって得たヨーロッパの科学技術に関する知見は,ヨーロッパの水利技術の紹介に生かされて,開墾政策の提言となってあらわれている。日本にも早く移入され,江戸時代の農書に大きな影響をあたえた。
執筆者:米田 賢次郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国明(みん)代の農書。著者は徐光啓(じょこうけい)。この書は徐光啓の死後6年、1639年に刊行された。『斉民要術(せいみんようじゅつ)』、王楨(おうてい)の『農書』とともに中国三大農書とされる。『農政全書』は12部門に分かれ、農本、田制、農事、水利、農器、樹芸、蚕桑、蚕桑広類(ワタ、アサなど)、種植、牧養、製造、荒政で、60巻に達する。日本の宮崎安貞(やすさだ)の『農業全書』に大きな影響を与えている。
[福島要一 2016年4月18日]
『山田龍雄他編『日本農書全集12・13 農業全書』(1978・農山漁村文化協会)』
中国明代の農書。60巻。治国治民の農政を最大の主題とする。著者の徐光啓(じょこうけい)はイエズス会のマテオ・リッチらと交流した明代を代表する自然科学者で,中国歴代の古文献を数多くひもといてそれ以前の中国農書を集大成しようとした。内容は農本・田制・農事・水利・農器・樹芸・蚕桑・蚕桑広類・種植・牧養・製造・荒政などに及ぶ。いち早く日本に移入され,宮崎安貞の「農業全書」の手本にされるなど,日本の農書に深い影響を与えた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
明末に編纂された農業関係の総合書。徐光啓(じょこうけい)の著作。60巻。古来の農学関係の諸説を12部門に分類整理したのをはじめ,農業関係の諸項を加え,広く農政全般に及ぶ優れた書。
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…さらに《農器図譜》16巻は初めての総合的な農具の図解で,在来農具のほとんどに及び,農史研究のうえに役立つことが多い。明代農書の代表的なものは徐光啓の《農政全書》60巻である。彼は礼部尚書(文武大臣)にまで昇った人であるが,西洋科学にも通じ,《農政全書》中に,〈泰西汞法(たいせいこうほう)〉2巻,〈荒政(飢饉対策)〉18巻の存することは,彼の経歴と学問的素養を背景にしたものである。…
※「農政全書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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