宮崎安貞(読み)ミヤザキヤスサダ

デジタル大辞泉 「宮崎安貞」の意味・読み・例文・類語

みやざき‐やすさだ【宮崎安貞】

[1623~1697]江戸前期の農学者。安芸あきの人。筑前福岡藩に仕え、のち辞して農業を営み、西日本各地を巡って農業に関する見聞を収集。「農業全書」を著した。

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精選版 日本国語大辞典 「宮崎安貞」の意味・読み・例文・類語

みやざき‐やすさだ【宮崎安貞】

  1. 江戸初期の農学者。安芸国広島県)の人。武士を捨て農耕技術の研究を行なった。著に「農学全書」。元和九~元祿一〇年(一六二三‐九七

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宮崎安貞」の意味・わかりやすい解説

宮崎安貞
みやざきやすさだ
(1623―1697)

江戸時代の農学者。安芸(あき)国(広島県)の人。広島藩士宮崎儀右衛門(ぎえもん)の二男として生まれ、25歳で、筑前(ちくぜん)国(福岡県)に至り福岡藩黒田忠之(くろだただゆき)(1602―1654)に仕え、禄(ろく)200石を給せられた。30歳ごろ勤めを辞し、筑前国志麻郡女原(みょうばる)村(福岡県西区周船寺町女原)に定住し、以後40年間、自ら農業を営み、開墾植林に努め、農業指導にあたった。その間、農業の先進地といわれる地方をしばしば旅行し、各地の老農に学び、農業の実際を見聞した。彼の主著『農業全書』は1697年(元禄10)7月に刊行されているが、彼は同年同月の23日に没しており、刊本を手にしたかどうかさだかでない。『農業全書』は刊行後、多大の影響を世に与えたが、その完成までの貝原益軒(かいばらえきけん)および益軒の兄の楽軒(らくけん)(1625―1702)、また益軒の子の好古(こうこ)(1664―1700)との関係を無視することはできない。安貞は益軒より7歳年長であったが、よくその指導を受け、とくに中国明代の農書農政全書』を手本とするようになったのは益軒の指導による。楽軒は『農業全書』の校閲と一部執筆などを行い、好古は出版に際して協力した。

[福島要一 2016年7月19日]


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朝日日本歴史人物事典 「宮崎安貞」の解説

宮崎安貞

没年:元禄10.7.23(1697.9.8)
生年:元和9(1623)
江戸前期の農学者。通称は文太夫。大蔵永常,佐藤信淵と共に明治以前における「日本の三大農学者」といわれる。著書は『農業全書』の1冊だけだが,その内容は明治以前の最高の農書と評価される。生涯については不明の部分が少なくない。広島(安芸)藩士の子に生まれ,25歳のとき福岡藩に仕えたが,数年後に浪人となった。西日本の各地を旅したのち福岡に戻って郊外の女原(福岡市西区)で帰農生活に入り,知遇を得た貝原益軒のすすめもあり,農書の執筆を決意した。当時すでに書かれていた農書類(『清良記』『会津農書』『百姓伝記』)はそれぞれの地元以外には全く伝わらず,益軒も安貞もそれらを知らなかった。つまり安貞は日本で最初と信じる農書の著述を生涯の目標にした。中国の『農政全書』などを参考にしつつ,みずから近隣諸国の農業を視察して経験豊かな農民たちから取材し,体験による検証を加えて『農業全書』を完成した。同書は特定の地方だけでなく,風土の違いを超えて日本全国すべてに役立つ普遍的な内容をめざし,西洋の近代科学と基本的に変わらない研究手法をふまえていた。具体的には約150種の有用植物に関する解説を中心にしている。益軒の後援もあって元禄10(1697)年に日本の農書として初めて印刷出版され,全国に広まり,その後の農書すべてに多大な影響をおよぼした。しかし安貞は出版とほぼ同時期に世を去って,その反響を知ることはできなかった。<参考文献>農務局編『大日本農功伝』,古島敏雄『日本農学史』1巻(『古島敏雄著作集』5巻),筑波常治『日本の農書』

(筑波常治)

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改訂新版 世界大百科事典 「宮崎安貞」の意味・わかりやすい解説

宮崎安貞 (みやざきやすさだ)
生没年:1623-97(元和9-元禄10)

江戸前期の農学者。通称は文太夫。広島藩士の次男に生まれ,25歳のとき筑前福岡藩に仕官した。30歳を過ぎて官を辞し,志摩郡女原(みようばる)村(現,福岡市西区女原)に住み,みずから開墾に従事し農耕に励んだ。その間,先進地の農業を視察し,老農の体験を学んだ。また藩内では貝原益軒,その兄楽軒と交わり,とくに益軒からは中国の農書や本草書について啓発を受けた。益軒もしばしば彼の農園を訪ねている。こうして40年の努力の結果,本邦農書の原典と評価される《農業全書》の執筆と出版をみることができた。彼はこの農書において,力耕する小農民に農業の知識を授け,万年飢餓の状態から解放されることを目的とした。女原地区ではその徳をたたえ,毎年〈安貞さん祭〉を営んでいる。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「宮崎安貞」の意味・わかりやすい解説

宮崎安貞【みやざきやすさだ】

江戸前期の農学者。安芸(あき)広島藩士の家に生まれ,筑前(ちくぜん)福岡藩に仕えたが,のち武士を捨て,近畿,中国など各地の農業を視察。筑前国女原(みょうばる)村に帰って農耕に励み,それまでに得た知識をもとに農民を指導した。この間貝原益軒(かいばらえきけん),その兄楽軒(らくけん)らと交わり,1696年には日本の農書の原典と評される《農業全書》を著した。→会津農書(あいづのうしょ)
→関連項目農書福岡藩

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「宮崎安貞」の解説

宮崎安貞
みやざきやすさだ

1623~97.7.23

江戸前期の農学者。通称は文太夫。安芸国広島藩士宮崎儀右衛門の次男。25歳のとき筑前国福岡藩に仕え200石を給されるが,30歳を過ぎて致仕。同国女原(みょうばる)村(現,福岡市西区)に隠居し農事を業とする。山陽道をはじめ畿内・伊勢・紀伊など諸国を回り老農の説を聞書きする一方,貝原益軒らとも交わり中国の農書や本草書を研究。みずからも栽培技術の改良を試みた。中国の「農政全書」を参考に,40年の経験と研究をもとに1696年(元禄9)「農業全書」10巻を著し,翌年出版。日本初の体系的農書として最高との評価をうける。大蔵永常・佐藤信淵(のぶひろ)とともに江戸時代の三大農学者と称された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宮崎安貞」の意味・わかりやすい解説

宮崎安貞
みやざきやすさだ

[生]元和9 (1623). 安芸
[没]元禄10 (1697).7.23.
江戸時代前期の農学者。通称は文太夫。福岡藩黒田家に仕えた。諸国を巡歴し,老農に説を聞き,中国の農書,本草書を参考にして,元禄10(1697)年『農業全書』(11巻)を著した。筑前志摩郡女原村周辺で農業を営み,同時に植民興業に努めた。「宮崎開」と呼ばれる地名は,宮崎が私財をなげうち村民とともに開墾したところといわれる。大蔵永常佐藤信淵とともに,江戸時代の三大農学者と称される。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「宮崎安貞」の解説

宮崎安貞 みやざき-やすさだ

1623-1697 江戸時代前期の農学者。
元和(げんな)9年生まれ。筑前(ちくぜん)福岡藩につかえたのち志摩郡女原(みょうばる)村(福岡市)で農業をいとなみ,近畿ほか各地で農事をまなぶ。40年の経験をまとめ,貝原益軒の助力もうけて元禄(げんろく)10年わが国初の体系的農書「農業全書」10巻を刊行した。元禄10年7月23日死去。75歳。安芸(あき)(広島県)出身。通称は文太夫。
【格言など】農術くわしからざれば五穀すくなくして,人民生養をとぐる事なし(「農業全書」序文)

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旺文社日本史事典 三訂版 「宮崎安貞」の解説

宮崎安貞
みやざきやすさだ

1623〜97
江戸前期の農学者
広島藩士の子。初め福岡藩に仕えていたが,数年で致仕し,農業技術研究のため諸国を遍歴。帰郷後はみずから村民とともに農耕に従事し,指導と振興につとめた。また私財を投じて開墾を行った。1697年刊の『農業全書』10巻は,40年にわたる彼の体験や中国の農書などに基づく増産技術書で,明治時代に至るまで農政全般に影響を与えた。

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世界大百科事典(旧版)内の宮崎安貞の言及

【農業全書】より

…1697年(元禄10)に出版された,刊本としては日本最古の体系的農書。元福岡藩士宮崎安貞が福岡城外女原(みようばる)村に帰農40年にして著述したもの。全11巻。…

※「宮崎安貞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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