群体性のイシサンゴ類を主体にし,その他の腔腸動物とともにサンゴ礁を形成する動物の総称。腔腸動物花虫綱六放サンゴ亜綱のイシサンゴ目に属する種類が大部分で,そのほかに八放サンゴ亜綱に含まれるクダサンゴやアオサンゴ,さらにヒドロ虫綱のイタミレポラなども含まれる。単体でサンゴ礁を形成しないイシサンゴ類を非造礁サンゴ,または深海サンゴという。
造礁サンゴにはトゲサンゴ科のハナヤサイサンゴ,ショウガサンゴ,トゲサンゴなど,ミドリイシ科のミドリイシ,アナサンゴ,コモンサンゴなど,そしてハマサンゴ科のハマサンゴ,ハナガササンゴ,アワサンゴなどがあり,もっとも造礁サンゴが豊富な南洋群島やオーストラリアの大堡礁(グレート・バリア・リーフ)などでは500種くらいはあろうとされている。しかし造礁サンゴ類は形が変化に富んでいるので,過去に異なった種とされていたものが,同一種の変異型として整理されると種類数が減少することも予想される。イシサンゴ類は,世界でもインド・太平洋に種類数が多く,大西洋で出現する種類数は少なくて70種ほどである。そして,インド・太平洋との共通種はまったく見られない。琉球諸島には200種以上が生息している。サンゴ礁は造礁サンゴが土台になって,有孔虫類,貝類,カイメン類,石灰藻類などの遺体が間を埋めながら形成されたものである。日本ではサンゴ礁は八重山諸島で大規模に発達しているが,宮古,沖縄,奄美諸島と北上するに従って貧弱になり,吐噶喇(とから)列島が北限である。九州,四国から本州の黒潮海域では造礁サンゴ類の成育は盛んであるが,サンゴの群集であって,本物のサンゴ礁とはいえない。
造礁サンゴは,熱帯,亜熱帯によく成育するが,その条件としては,水温25~29℃,塩分36%前後であって,水温が18℃以下,36℃以上が長く続くと死滅するといわれる。また成育する深さは光線がとどく範囲の浅海である。造礁サンゴ類はポリプが動物性プランクトンをとらえてたべる肉食動物であるが,ポリプに共生する無数の顕微鏡的な褐虫藻が生産する有機物も栄養源にし,また,この褐虫藻が造礁サンゴ類の石灰質骨格をつくる役割を担っている。小笠原で戦時に沈んだ船に着生しているテーブル状のイシサンゴの直径から推定すると,1年間に平均2cmほど成長すると見られる。オーストラリアや沖縄でオニヒトデに食害をうけ,かなりの造礁サンゴが死滅したこともあり,また台風によって海が荒れ,ひっくり返って死滅することもある。
→サンゴ →サンゴ礁
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…造礁生物が集積・固結してできた礁石灰岩が,低潮位面またはそれに近い位置にまで海底から高まり,防波構造をつくっている地形をいう。造礁生物の主体は,活発な炭酸カルシウムの分泌により,強い波にも抵抗しうる骨格をもった造礁サンゴで,ミドリイシ科,キクメイシ科,ハマサンゴ科,クサビライシ科などイシサンゴと呼ばれるものである。これらはどれもイソギンチャクなどと同じ腔腸動物に含まれる。…
※「造礁珊瑚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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