遅延型アレルギー(読み)ちえんがたあれるぎー(英語表記)delayed-type hypersensitivity

日本大百科全書(ニッポニカ) 「遅延型アレルギー」の意味・わかりやすい解説

遅延型アレルギー
ちえんがたあれるぎー
delayed-type hypersensitivity
delayed-type allergy

原因となる抗原アレルゲン)に曝露(ばくろ)されてから、ある程度の時間が経過した後に症状が現れるアレルギー。「ある程度の時間」は若干あいまいなところがあり、専門書でも統一された記述となっていないが、一般的にアレルギー反応分類は、アレルゲンに曝露されてから症状として現れるまでの時間によって、即時型アレルギーimmediate hypersensitivity、遅発型アレルギーlate phase hypersensitivity、遅延型アレルギーdelayed-type hypersensitivityの三つとされる。すなわち、即時型アレルギーは免疫グロブリンEIgE抗体を介した反応であり、おおむね30分以内、遅発型アレルギーは単球Tリンパ球好酸球を介した反応であり、おおむね3~12時間後、遅延型アレルギーはTリンパ球を介した反応であり、おおむね1~2日後である。1963年にゲルPhilip George Houthem Gell(1914―2001)とクームスRobert Royston Amos Coombs(1921―2006)がアレルギーを免疫反応機序メカニズム)で四つに分類して説明したが、それに照らすと即時型アレルギーがⅠ型、遅延型アレルギーがⅣ型と理解された。その後免疫の理解が進んだ結果、現在ではⅠ型とされるIgE抗体を介した反応のみが概念として確立され、リンパ球や好酸球がかかわる反応はかならずしもこの分類の通りでは説明されなくなり、遅発型と遅延型はしばしば明確に分けることなく記述されている。

 アレルギーは、アレルゲンへの曝露によって症状がおこるという事実と、それが免疫学的機序によるという両者によって確定できるものである。即時型アレルギーはその時間経過から事実の確認が容易であること、免疫学的機序がIgE抗体を介するものであるという理解が確立されていることから、明確に判断しやすい。一方、遅発型および遅延型アレルギーはアレルゲン曝露と症状の時間経過が長く、再現性に乏しいこと、免疫学的機序が複雑であり十分に解明されているとはいえないことから、明確に判断することがしばしば困難である。したがって、遅延型アレルギーの診断は、事実の時間経過を十分に確認すること、アレルゲンに曝露された状態と曝露されていない状態で症状が異なっていることを、必要に応じて負荷試験、除去試験などで確認することによって行う。

 なお、遅延型アレルギーをIgG抗体の存在によって説明しようとする動きがあることには注意が必要である。IgG抗体はIgE抗体とは異なり血液中に多量に存在するため、計測そのものは容易にできる。しかしながら、IgG抗体はアレルギーがない人にも存在しており、IgG抗体の存在と実際のアレルギー症状はかならずしも関係していない。IgG抗体の検査結果で食物アレルギーを判断することは、不必要な食物除去を引き起こし、健康被害を招くおそれがある。アメリカ、ヨーロッパ、日本の各アレルギー学会は公式にIgG抗体の診断的有用性を否定している。

[高増哲也 2021年12月14日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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