食物アレルギー(読み)ショクモツアレルギー(その他表記)food allergy

デジタル大辞泉 「食物アレルギー」の意味・読み・例文・類語

しょくもつ‐アレルギー【食物アレルギー】

特定の食物を摂取した際に起こるアレルギー症状。
[補説]食品衛生法では、原材料にエビ、カニ、クルミ、小麦、ソバ、卵、乳、落花生の8品目いずれかが含まれる場合は表示を義務づけている。さらに、アーモンド、アワビ、イカ、イクラ、オレンジ、カシューナッツキウイフルーツ、牛肉、ゴマ、サケ、サバ、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マツタケ、モモ、ヤマイモ、リンゴ、ゼラチンの20品目についても、表示を推奨するとしている。

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共同通信ニュース用語解説 「食物アレルギー」の解説

食物アレルギー

病原体などから体を守る免疫反応が、特定の食べ物に対して過敏に働き、じんましんや息切れ、腹痛などの症状を引き起こす。急激な血圧低下や意識障害などで死に至ることもある。2012年には東京都調布市の小学校で乳製品にアレルギーのある女子児童が、給食で担任から渡されたチーズ入りチヂミを食べた後に死亡した。文部科学省はこの事故を受け、学校での対応指針を作成した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「食物アレルギー」の意味・わかりやすい解説

食物アレルギー
しょくもつあれるぎー
food allergy

本来は栄養として取り入れる相手である食物に対して、外敵から身を守るはずの免疫の仕組みが作動して、なんらかの症状がおこってしまうこと。日本小児アレルギー学会が作成している、食物アレルギーの標準的な治療のあり方や考え方を示した『食物アレルギー診療ガイドライン』(2016)では、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起(じゃっき)される現象」と定義されている。

[高増哲也 2020年3月18日]

症状

症状は、皮膚症状(じんま疹(しん)など)、のどの違和感、呼吸器症状(咳(せき)、喘鳴(ぜんめい))、消化器症状(腹痛、下痢、嘔吐(おうと))、神経症状(眠気など)、血圧低下など多彩であるが、そのなかでももっともよくみられるのがじんま疹である。

[高増哲也 2020年3月18日]

原因となる食物

経口摂取するものはすべて原因(アレルゲン)となりうる可能性があるが、頻度の高い食物として、乳児~幼児では鶏卵、乳製品、小麦、そば、魚類、ピーナッツなどが当てはまる。児童~成人においては、甲殻類、魚類、小麦、果実類、そば、ピーナッツなどが当てはまる。鶏卵や乳製品、小麦は年齢とともに寛解(症状が現れなくなること)しやすいが、その他のものは寛解しにくい。

 食品表示法では、消費者が食品を自主的かつ合理的に選択し、安全に摂取するための「食品表示基準」が定められており、特定のアレルゲンを含む食品については、食物アレルギーの発症数や重篤度から勘案してその原材料の表示が義務づけられている。表示が義務づけられた食材は「特定原材料」とよばれ、2019年(令和1)末時点で7品目が指定されている。すなわち「卵、乳、小麦、落花生(らっかせい)、えび、そば、かに」である。また「特定原材料に準ずるもの」として表示することが推奨されている食材(推奨品目)として、次の21品目が設定されている。すなわち「いくら、キウイフルーツ、くるみ、大豆、バナナ、やまいも、カシューナッツ、もも、ごま、さば、さけ、いか、鶏肉、りんご、まつたけ、あわび、オレンジ、牛肉、ゼラチン、豚肉、アーモンド」である。

[高増哲也 2020年3月18日]

診断・検査

診断は、特定の食物に対して症状を引き起こしたという事実と、免疫によることを確認するための検査(特異的免疫グロブリンE〈IgE〉抗体検査)の組合せによって行う。ただし、検査で抗体があるというだけで、食物アレルギーと診断してはならない。

 そのほか、摂取することで症状が現れるかどうかを医療機関で確認する方法として、「食物経口負荷試験」がある。

[高増哲也 2020年3月18日]

対処法(治療)

食物アレルギーの対処法は、原因となる食物を特定したうえで、その食物を食事から除去することであり、そうすれば症状がおこらないようにすることができる。ただし、食物除去は栄養面や生活面での不自由につながりうることから、除去は必要最小限とすることとされている。過去には、家族に食物アレルギーがある場合、あらかじめ食物除去をしておくとよいと思われていたが、最近では、あらかじめ食物除去することは勧められないとされ、さらに、安全に食べることができる条件がわかっている場合には、その範囲内で食べるようにしておくことが、その後の食物アレルギーの軽減や予防につながる可能性があるとされている。また皮膚の状態をよくしておくこと(湿疹などがない状態にしておくこと)が、食物アレルギーの予防に有利に働くと考えられている。

[高増哲也 2020年3月18日]

食物アレルギーの特殊型

食物アレルギーは、通常は食物を食べることによって症状がおこるが、食物が皮膚や粘膜に接触することで症状がおこる場合もあり、それも食物アレルギーに含まれる。症状が口腔(こうくう)、のどに限局するものを「口腔アレルギー症候群」という。

 また、特定の食物を摂取した後に運動したときだけに全身型の症状が現れるものを、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」という。

[高増哲也 2020年3月18日]

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内科学 第10版 「食物アレルギー」の解説

食物アレルギー(アレルギー性疾患)

定義・概念
 食物アレルギーは,食物を摂取することにより引き起こされるが,食物摂取による生体への傷害性の反応(adverse reactions to food)は,毒性反応と非毒性反応に大きく分けられ,食物アレルギーは非毒性反応に含まれる.非毒性反応には,食物アレルギーのほかに食物不耐症(food intolerance)があり,食物アレルギーが免疫学的機序により惹起されるのに対し,食物不耐症は先天性代謝異常(ラクターゼ欠損症など)をはじめとした非免疫学的機序に起因する多様な疾患よりなる.
 わが国の食物アレルギーの原因食品として,鶏卵,牛乳,大豆が3大アレルゲンといわれてきた.しかし,最近の調査によると,大豆よりも小麦の頻度が高く,7歳以後はそば,エビ,魚介類による食物アレルギーが増加する(図10-30-1,表10-30-1).
病因・病態
 消化管は,必要な栄養を吸収する組織であり,また細菌やウイルスなどの有害物質の侵入から生体を防御する最前線でもある.すなわち,腸管は多様な機能をもち,栄養となる食物蛋白質には排除的な免疫応答を誘導せず,病原微生物などの有害物質には免疫応答することにより生体への侵入を阻止する.そこで,経口的に摂取された食物に対しては,経口免疫寛容とよばれる抗原特異的な全身性の免疫不応答が誘導され,消化管の免疫応答をコントロールするシステムが働いている.このような消化管に特徴的な免疫応答制御機構の異常が食物アレルギーの原因と考えられる.
疫学
 食物アレルギーの有症率については,欧米では3歳以下の小児の6%,成人では約1.5%との報告がある.わが国では1997年に3歳児,小学生,中学生,成人を対象に全国規模のアンケート調査が行われたが,6.2~9.3%に即時型食物アレルギーを示す回答がみられた.現在のところ乳幼児期の有症率は5~10%であるのに対し,学童期では,学校給食における食物アレルギーの申請率は1.3%であり,2004年文部科学省の調査では2.3~2.6%となっている.
臨床症状
 食物アレルギーは多彩な臨床症状を示すが(表10-30-2),全身性の即時型反応であるアナフィラキシーは最も重篤な食物アレルギーの症状であり,通常食物摂取後15分から30分以内に発症し,じんま疹,血管性浮腫,喉頭浮腫,気管支攣縮,血圧低下,不整脈,腹疝痛などを呈する.消化器症状のなかでも口腔粘膜の症状が主体で,ほかのアレルギー症状を伴わない食物アレルギーを口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome)とよび,接触性じんま疹と考えられている.野菜,果実が原因であることが多い.このほかに食物アレルギー関連疾患として,精神神経症状をはじめとした多彩な症状を示すアレルギー性緊張・弛緩症候群や,特定の食物を摂取して運動をすると全身にアレルギー症状が引き起こされる食物依存性運動誘発アナフィラキシー【⇨10-27】などがある.
検査成績
 アレルゲン特異的IgE抗体値,総IgE値や末梢血好酸球数の測定,好塩基球ヒスタミン遊離試験またアレルゲン液を用いた皮膚テスト(プリックテスト,スクラッチテスト,パッチテスト)などが行われる.しかし,これら検査結果は必ずしも食物負荷試験の結果と一致せず,食物アレルギーの診断に直接結びつくものでないことに注意する必要がある.
診断・鑑別診断
 臨床症状の発現と食物摂取の関係についての詳細な問診が大切である.問診からの情報と検査所見をもとに疑わしい食物を除去し症状の改善を確かめる食物除去試験と,疑わしい食物を負荷して症状発現の再現性を確認する負荷試験を行う.この食物負荷試験は,医師の管理のもとに症状の発現を確認するものであり,最も重要な診断的意義を有する.しかし,負荷試験はアナフィラキシーを引き起こす可能性があることより,インフォームドコンセントの取得に十分配慮し慎重に行う必要がある. 鑑別診断は,食物アレルギーと同様の症状の発現にかかわる種々の原因を慎重に除外することによるが,原因食品の同定において食品に含まれるセロトニンやヒスタミンなどの薬理活性物質や食品添加物に注意する必要がある.
経過・予後
 予後については,乳児の食物アレルギーは寛解しやすく,特に牛乳と卵に対しては耐性を獲得しやすい.しかし,ピーナッツ,そば,魚類,エビ・カニなどの甲殻類などに対する食物アレルギーは,長期間除去食療法を行っても耐性の獲得が困難なことが多い.
治療・予防
 原因となる食物を摂取しない除去食療法が,治療の基本である.しかし,厳格な除去食療法は栄養障害や摂食障害を引き起こすことから,適切な栄養指導のもとで行う.また,特異的IgE抗体値の推移を参考に除去食後,12~18カ月で食物負荷試験を行い,耐性が獲得されれば除去食療法を解除する.薬物療法としては,経口クロモグリク酸ナトリウムなどの抗アレルギー薬が使われる.また,アナフィラキシーへの医療機関外での対処法としてアドレナリン自己注射薬(エピペン)の使用が認められている.最近はまだ研究段階だが,学童期になっても食物アレルギーが改善しない症例に,原因食物を計画的に摂取させることにより耐性を誘導する経口免疫療法も試みられている.[河野陽一]
■文献
Metcalfe DD, Sampson HA, et al: Food allergy. In: Adverse Reactions to Foods and Food Additives, 4th ed, Blackwell Publishing, Massachusetts, 2008.
日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2012(宇理須厚雄,近藤直実監修),協和企画,東京,2011.

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六訂版 家庭医学大全科 「食物アレルギー」の解説

食物アレルギー
しょくもつアレルギー
Food allergy
(アレルギー疾患)

どんな病気か

 食べ物を経口摂取した時に、その食べ物に対するアレルギー反応により生じます。多くは食べ物を摂取して数分から1時間以内にじんま疹や腹痛などの症状が出る即時型(そくじがた)ですが、数時間以上経過してから湿疹の悪化や下痢などがみられる遅延型(ちえんがた)もあります。

 成人にもみられますが、消化管粘膜の未熟な小児に多くの症状がみられます。

原因は何か

 食物中のアレルゲンは消化管粘膜をとおって血液中に入り、その結果アレルゲンに反応する免疫グロブリンE(IgE)などの抗体やT細胞がつくられます。再びその食べ物を摂取することでアレルギー反応が生じ、症状が現れます。多くの食べ物が原因になりますが、そのうち頻度の高いものを表3に示します。

 そのほか、アレルギーではありませんが、食物中に含まれる成分(仮性アレルゲン)によりアレルギーとよく似た症状が現れることがあります。その代表的なものがサバ、タケノコ、ナスに含まれるヒスタミン様物質、ジャガイモなどに含まれるサリチル酸化合物です。

症状の現れ方

 即時型では、腹痛・下痢などの消化器症状やじんま疹・顔面腫脹(しゅちょう)などの皮膚症状、鼻炎、結膜炎(けつまくえん)気管支喘息(ぜんそく)症状、のどの詰まる感じ(喉頭浮腫(こうとうふしゅ))などが現れます。さらに重症になると血圧が低下し、アナフィラキシーショックを起こします。果物などのアレルギーでは初めに口唇のはれや口内のかゆみがみられ、口腔アレルギー症候群と呼ばれます。

 遅延型では食べ物によりアトピー性皮膚炎などの湿疹が悪化したり、下痢をすることがあります。

検査と診断

 血液中のアレルゲン特異的免疫グロブリンE(IgE)抗体の測定や、アレルゲンを白血球に作用させて反応をみるヒスタミン遊離試験を行います。ただし、これらの結果が陽性でも、必ずしも症状の原因ではないので、値が低い場合にはその他の検査結果を合わせて総合的に判断します。

 食物を用いたプリックテストは即時型の判定に有用です。

 症状の原因になる食べ物の特定には、食物除去試験や負荷試験を行います。負荷試験は症状を誘発する危険があるため、食物の負荷を少量より開始し、徐々に増やして反応をみます。

治療の方法

 原因となる食べ物を食べないようにするのが最も良い方法です。しかし、小麦や卵など多くの食品に含まれているものでは完全に除去するのは難しい場合があり、非吸収性の抗アレルギー薬(クロモグリク酸など)を食前に服用して症状が出るのを防ぎます。

 症状が出た時は、対症療法として抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服し、湿疹の悪化にはステロイド外用薬を塗ります。

 気管支喘息アナフィラキシーショックの治療については、該当する項目を参照してください。

病気に気づいたらどうする

 食物アレルギーが疑われたら、まず原因と思われる食べ物を食事から除去します。低アレルギーミルクや低アレルギー米など、市販されている低アレルギー食品を代替食品として利用するのも有効です。小児の場合、1~2年除去していれば自然に食べられるようになることが多いので、負荷試験を行って、食べても大丈夫かどうか確認後に再開します。

相原 道子



食物アレルギー
しょくもつアレルギー
Food allergy
(子どもの病気)

どんな病気か

 卵や牛乳など特定の食物を摂取することにより、アレルギー(免疫)反応が生じ、皮膚や消化器、呼吸器などに病的反応を起こすものです。最も重大な反応は、血圧が下がって意識がなくなるアナフィラキシーショックです。乳児で5~10%、幼児で3~4%、成人で1~2%と、子どもに多い病気ですが成人にもみられます。原因は乳幼児では卵、牛乳、小麦が多く、成人では甲殻類(エビ、カニ)と魚が多いと報告されています。

原因は何か

 食物蛋白は、胃のなかで蛋白分解酵素により分解されるため抗原性を失いますが、乳幼児では消化機能が完全でないため、抗原性を維持したペプチドのまま腸から体のなかに吸収されて免疫組織にたどり着くことがあります。その場合でも、通常は、栄養として有益な食物由来のペプチドに対してはアレルギー反応を起こさないような仕組み(免疫寛容)がはたらくのですが、食物アレルギーのヒトではこの機序がはたらかず病気が起こります。

 アレルギー反応には、数分から数時間以内に起きる即時型アレルギー反応と、十数時間から数日たって起きる遅延型アレルギー反応とがあります。即時型アレルギー反応の原因は、IgE抗体というアレルギー抗体が作られてしまうことです。時間が経って起きてくる(遅延型)アレルギー反応は、原因となる食物抗原ペプチドを記憶しているリンパ球という免疫細胞が、抗原ペプチドによって刺激を受けて活性化されて組織を傷害することにより起こると考えられています。

症状の現れ方

 皮膚・粘膜、消化器、呼吸器などに、表3に示したような多様な症状を起こします。その程度はいろいろで、皮膚の軽いぶつぶつ(発疹)やかゆみの出現程度ですむものから、生命に影響のある重大なアナフィラキシーショックまで千差万別です。

 また同じ食品でも、食べた量や体調により症状に差があります。原因となる食品を食べて数分から数時間以内に起きてくる即時型アレルギー反応に由来する症状と、十数時間~数日以上の時間がたって起きてくる遅延型アレルギー反応に由来する症状があります。

検査と診断

 即時型の症状を起こす食品は、経過により因果関係が容易に推測できますし、血液のなかの食物に特異的なIgE抗体の有無を測定することにより、診断が可能です。

 時間がたって起きてくる(遅延型)症状はなかなか診断が困難です。疑わしい食品と症状との関係を、日誌をつけることにより調べます。また、その食物を除去することにより症状が良くなることを確かめます。いったん除去で良くなった後、その食物を負荷して症状を誘発できれば確実です。

治療の方法

 原因となる食品が判明したら、その食品を除去することが治療の基本です。即時型アレルギーによる症状には抗ヒスタミン薬やステロイド薬を内服や注射で使用します。アナフィラキシーショックに対してはアドレナリンを筋肉内に注射します。患者さん自身が常に携行し、いつでも使用できるように作られた注射薬(エピペン)があります。

浜﨑 雄平


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食の医学館 「食物アレルギー」の解説

しょくもつあれるぎー【食物アレルギー】

《どんな病気か?》


〈過剰な免疫反応が人体にマイナスに作用する〉
 人の体には、入ってくる異物を認識してこれを排除しようとする、免疫反応(めんえきはんのう)というしくみが備わっています。免疫反応は、細菌やウイルスなどから私たちの体をまもってくれるたいせつなしくみですが、なかには過剰に反応して不快な症状をもたらしたり、ときには生命をも脅(おびや)かすことがあります。このように、人にとってマイナスのかたちで作用するのがアレルギー反応です。
 アレルギー反応を起こす原因物質(アレルゲン)には、ダニやカビ、花粉やタバコの煙などがありますが、食べものがアレルゲンになっている場合を、とくに食物アレルギーといいます。
 私たちはふだん、いろいろなものを食べて栄養をとっています。こうした栄養分は、じつは体にとって異物になりますが、ふつうは免疫反応は起こりません。栄養分を吸収する腸管には独自の免疫調節機能が備わっていて、栄養となるものには免疫反応を起こさないよう、きちんと監視しているからです。
 食物アレルギーは、この免疫調節機能が乱れて起こります。
 アレルゲンとなるものには、たまごや牛乳、ダイズ、豚肉、そばなどがあり、食べると腹痛や下痢(げり)、嘔吐(おうと)などの症状を引き起こします。砂糖などの甘み成分やトウガラシの辛み成分もアレルギー反応を誘発します。
 アトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくのように、皮膚や呼吸器に症状がでる場合も少なくありません。
 ですから食物アレルギーの治療は、早めにアレルゲンとなる食物をつきとめて、献立から取り除くことが基本となります。

《関連する食品》


〈免疫機能を正常にもどす乳酸菌、ビフィズス菌〉
○栄養成分としての働きから
 乳酸菌飲料やヨーグルトに含まれている乳酸菌やビフィズス菌には、免疫機能のバランスを正常にもどす働きがあります。
 食物アレルギーの多くは、IgE(免疫グロブリンE)という抗体(こうたい)が、肥満細胞(ヒスタミンなどさまざまな化学物質を抱えた細胞)と結合することで起こります。乳酸菌にはこのIgEが体内でつくられるのを抑える作用があるのです。
 逆に、腸の粘膜(ねんまく)を覆(おお)っているIgA(免疫グロブリンA)という抗体は、食品に含まれるアレルゲンが腸管から入るのを防いで、アレルギー反応が起こらないようにする役目を負っています。実際、アレルギーの人は、体内でつくられるIgAが少ないことがわかっています。ビフィズス菌はこのIgAをふやして免疫機能を修正してくれます。
 魚の脂肪に含まれるIPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)にも、免疫機能を調整する作用があり、加えて食物アレルギーの症状であるぜんそくやアトピー性皮膚炎の炎症を抑える効果もあります。
 ただし、魚介類はアレルギー反応を誘発する可能性が高いので、IPA、DHAをとるときは、サプリメントで代用するとよいでしょう。
 植物油に含まれているリノール酸は、コレステロールの値を下げ、動脈硬化を予防する働きがあるとして、一時期大変注目されました。しかし最近では、過剰に摂取するとアレルギー症状を悪化させることがわかっています。
 この過剰摂取を解消するものとして期待されているのが、シソ油やエゴマ油などに多く含まれているα(アルファ)リノレン酸です。
 α―リノレン酸は必須脂肪酸の1つで、体内で合成することができないため、食品からとらなければなりません。
 摂取すると体内で代謝(たいしゃ)によってIPAやDHAにかわり、アレルギー症状の緩和に働きます。
 もう1つ、ビタミンCやナイアシンには、アレルギー症状を起こす原因物質であるヒスタミンの生成を抑える効果があります。ビタミンCはブロッコリー、コマツナ、カリフラワー、芽キャベツに多く含まれています。
 ナイアシンは、魚類や肉類に豊富に含まれていますが、それらがアレルゲンとなることも多いので注意が必要です。心配な場合は、サプリメントで補給しましょう。
〈食品添加物を含むスナック菓子などはひかえる〉
○注意すべきこと
 食物アレルギーの症状の現れ方は複雑で、あるものを食べたからといって症状がすぐにでるとはかぎりません。
 複数の食品の相互作用によって起こることもあります。それだけに原因となる食品を見つけるのは、たいへんむずかしいといえます。早めに専門医に相談するとともに、食べた食品を記録して、症状の出方をよく観察してみてください。
 アレルゲンがまだ特定できない場合は、アレルギー反応を起こしやすい生ものは避け、できるだけ加熱調理したものをとるようにします。
 甘味料や香辛料、食品添加物もアレルゲンになるので注意が必要です。添加物の多いコーラやスナック菓子、チョコレートなどの甘いお菓子はひかえましょう。
 またアレルゲンがわかっている場合は、それと同じ食品群からアレルゲンにならないものを探すなどして、栄養バランスを欠かないよう、くれぐれも注意してください。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「食物アレルギー」の意味・わかりやすい解説

食物アレルギー
しょくもつアレルギー
food allergy

特定の食物摂取後に起こる病的な過剰反応(→アレルギー)。食中毒や毒性食物による反応,乳糖不耐症などの食物不耐症とは区別される。乳児や幼児に多くみられるが,加齢とともに耐性を獲得し症状を呈さなくなる場合もある。アトピー性皮膚炎じんま疹などの皮膚症状,下痢や嘔吐などの消化器症状,呼吸困難などの呼吸器症状のほか,全身性の激しいショック症状(→アナフィラキシー)を引き起こすなど生命にかかわる危険性もある。問診,血液検査皮膚反応を経て,食物除去試験,食物負荷試験を行ない原因食物を確定する。治療には原因食物の除去が最も効果的であるため,2001年,食品衛生法施行規則によって,重症度が高く症例数が多いとされるエビ,カニ,コムギ,そば,鶏卵,乳,ラッカセイを特定原材料と定め,加工食品食品添加物にこれらが含まれる場合はその旨を表示することが義務づけられた。国際食品規格委員会 Codex Alimentarius Commission(→国際食品規格)でも同様の合意がなされている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「食物アレルギー」の解説

食物アレルギー

食物を摂取して発症するアレルギー。原因物質はアレルゲン(allergen=抗原)で、その大半がたんぱく質。食品衛生法に基づき、アレルギーを引き起こす可能性のある原材料名には表示義務がある(2002年7月実施)。その原材料は卵、乳、小麦、ソバ、落花生の5品目(発症率の70%)。また、発症率は低いがエビ、カニ、サバ、大豆、鶏肉などの19品目については、可能な限りの表示を推奨している。食品中のアレルゲンを除去、あるいは分解した低アレルゲン食品が開発されている。食材のつなぎとなる牛乳や卵を除去したアレルゲン除去食品(ハンバーグ、ソーセージ、マーガリン等)もあり、特別用途食品として認可されている。

(的場輝佳 関西福祉科学大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

栄養・生化学辞典 「食物アレルギー」の解説

食物アレルギー

 食品アレルギー,食事アレルギー,食事性アレルギーともいう.食物の特定の成分に免疫系が過敏に応答して,望ましくない反応を起こす症状.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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