遊戯療法(読み)ゆうぎりょうほう(英語表記)play therapy

  • ゆうぎりょうほう イウギレウハフ
  • ゆうぎりょうほう〔イウギレウハフ〕
  • 遊戯療法 play therapy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

遊びを媒体とする精神療法遊びとは子供が環境に適応する手段の一つであり,また,その子の適応様式が投影される場面でもある。そこで,遊びをコミュニケーションの媒体として診断に役立てるとともに,遊びを通じて情緒的あるいは知的な安定と発達をはかる。個人法と集団法とがあり,また,特定道具を与える方法と,自由に選ばせる方法とがある。情緒障害児がおもな治療対象になる。

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世界大百科事典 第2版の解説

子どもに行われる心理療法の一つ。大人の心理療法が治療者との間に交わされる言語仲介にして治療関係が成立するのに対して,子どもでは言葉による自己表現洞察への過程が不十分なため,遊びやおもちゃ媒介にして心理療法を行う。遊びは子どもにとって本質的なものであり,非常に有効な自己表現活動であって,思いっきり遊ぶことに浄化作用,治療作用があるとされる。一般にはプレールームといわれる専用遊戯室の中で行われ,部屋の外に出ないのが原則である。

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大辞林 第三版の解説

心理療法の一。治療者とクライアントが遊びを通して交流し、感情や葛藤かつとうの表現をはかるもの。子供の心理治療における代表的技法。プレーセラピー。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

遊びを通して子供の心理治療を行うこと。プレイ・セラピー。遊びは言語的伝達手段の未熟な幼児や児童の場合は、もっとも有効な自己表出の手段である。遊びは現実の制約から逃れ、主体的に心的世界を構築するものであり、幼児はこの世界において自己を発見し意味を創造していくことができる。遊ぶことのできない子は問題児であり、遊ぶことは社会的、文化的成長にとって重要な意義をもっている。エリクソンは、理解ある大人から保護的承認を受け、遊びを演じ尽くすことが子供に許されているもっとも自然な自己治療の方法であるという。まさに遊びが心理療法の手段として使われる根拠もそこにある。
 精神分析では、ことばを用いた自由連想法が治療の技術として使われるが、言語的表出や伝達の未成熟な幼児や児童では、遊びそのものが大人の自由連想と同じ意義をもつものと考えられる。イギリスの精神分析学者のメラニー・クラインの場合は、遊びのなかに子供の無意識が象徴的に表現されると考え、さまざまな遊具を子供に与えて自由に遊ばせて児童分析を試みようとする。たとえば、人形の手や足をもぎとることは、親に対する無意識的な敵意とか嫉妬(しっと)の表れであると解釈される。しかし、大人の自由連想と子供の遊びを同じように考えることに反対する立場もあり、フロイトの娘のアンナ・フロイトAnna Freud(1895―1982)は、遊びのなかでの子供と治療者との関係を重視しようとする。子供の心理治療でもっとも重要なことは遊びがなにを表しているか、子供の心の世界でなにが起きているかを治療者が理解することであるが、こうしたことはすべて治療者―患者の関係のなかで起きているからである。また、遊びを成長過程とみなし、心理的葛藤(かっとう)の表出、緊張の解放とみなす場合には治療技術も異なってくる。たとえば、治療者は直接に関与せず、子供の自発的遊びを援助するにとどまる方法もある。いずれにしても、遊戯療法は、幼児や児童を対象にするもっとも一般的な心理療法である。[外林大作・川幡政道]
『D・W・ウィニコット著、橋本雅雄訳『遊ぶことと現実』(1979・岩崎学術出版社) ▽東山紘久著『遊戯療法の世界 子どもの内的世界を読む』(1982・創元社) ▽メアリー・R・ハワース著、斎藤万比古監訳、山崎透・佐藤至子他訳『ある少年の心の治療――遊戯療法の経過とその理論的検討』(1997・金剛出版) ▽メラニー・クライン著、小此木啓吾・岩崎徹也責任編訳、衣笠隆幸訳『メラニー・クライン著作集2 児童の精神分析』(1997・誠信書房) ▽エリク・H・エリクソン著、近藤邦夫訳『玩具と理性――経験の儀式化の諸段階』新装版(2000・みすず書房) ▽日本遊戯療法研究会編『遊戯療法の研究』(2000・誠信書房) ▽リネット・マクマホン著、鈴木聡志・鈴木純江訳『遊戯療法ハンドブック』(2000・ブレーン出版) ▽弘中正美著『遊戯療法と子どもの心的世界』(2002・金剛出版)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 心理療法の一つ。遊戯によって感情の緊張をときほぐすことをめざしている。英語のプレイセラピー(play therapy)の訳語として用いられたときには、過去の経験や心理的葛藤を劇にして表現する心理劇を意味することもある。〔精神分析入門(1959)〕

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最新 心理学事典の解説

プレイセラピーplay therapyとも称される,遊びを通して行なう子どもを対象とする心理療法の総称。遊戯療法では,遊びを媒介にしたコミュニケーションや自己表現の中でさまざまな行動的,性格的な問題が解決され,あるいは発達が促進される。遊びの中で意識的のみならず無意識的な次元でなされる援助的(治療的)かかわりは,言語的なコミュニケーションが十分にできない子どもにとって,安全かつ有用な援助(治療)手段である。遊戯療法は心理療法の特定の学派による呼称ではなく,上述のように子どもに対して,遊びを通して行なわれる心理療法の総称である。したがってさまざまな学派が,各々の理論と援助技法に基づいた遊戯療法を行っている。歴史的には1900年代前半,フロイトFreud,S.の精神分析を子どもに適用しようとする試みから始まり,アンナ・フロイトFreud,A.やクラインKlein,M.は遊びを用いて児童心理分析を行なった。さらに,来談者中心療法の流れから,援助者と子どもの遊びを介した人間関係の中で生じる子どもの自己成長力を重視するアクスラインAxline,V.M.が子ども中心療法child-centered play therapy(CCPT)を行なった。

 アクスライン(1947)が提唱した以下のセラピストの八つの原理は,さまざまな理論的背景やアプローチを超えて遊戯療法を行なうセラピストの基本的態度として重視されている。八つの原理の要約は,①ラポール(援助(治療)関係における信頼関係)を確立する,②子どもをあるがままに受け入れる,③自由に自己表現できる雰囲気にする,④子どもの気持ちを反射する,⑤子どもに責任をもたせる,⑥子どもに先導させる,⑦治療は緩慢な過程であることを認識する,⑧必要な制限を設ける,である。不登校,心身症などに見られる,心因性の問題や環境因が大きい神経症的な問題に対しては,このような受容的態度による支持的なアプローチが有効であることも多い。

 一方で,アクスラインが提唱した受容的態度を遊戯療法の基礎的かかわりとしながらも,自閉症などの発達障害や,種々の強迫性障害,うつ病などの精神障害をもつ子どもたちを対象に,発達面を含む心理アセスメントをもとにした社会技能訓練法social skills training(SST)によるソーシャルスキルの獲得や,認知行動療法による認知や行動に対する積極的な介入も行なわれている。

 主に乳幼児期から児童期の子どもを対象とする遊戯療法は,多くの場合,プレイルームとよばれる玩具を備えた一定の広さをもつ空間で実施される。その中で,子どもは担当のセラピストとの安定した援助(治療)的関係性や,自分に与えられた時間と空間という安定した枠組みに守られながら,安心感と信頼感のある自由にして守られた世界をもつことができる。このような非日常的な援助(治療)的空間の中で,子どもは治療者との言語的コミュニケーションや玩具や遊びなどを通した非言語的なコミュニケーションを通して,自由に自己表現し,対人関係を学ぶことによって,子どもが本来もつ自己成長力が促進される。遊戯療法の一環として箱庭療法が行なわれたり,スクイグルsquiggle(相互なぐり描き法)や風景構成法などの描画(絵画)療法やコラージュ療法などの芸術療法が行なわれることもある。ただし,破壊的な行動や危険な行動などについては行動の枠を設ける。このような制限は子どもの安全と安心を提供する守りとして機能する。また,子どもの場合は環境の影響が大きいため,子ども本人に対するアプローチだけでなく環境調整が重要となることが多い。したがって,子どもに対する直接的な介入としての遊戯療法に並行して,保護者や養育者の保護者面接(親面接)を行なうことも多い。
〔高橋 美保〕

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