出典 最新 心理学事典最新 心理学事典について 情報
遊びを通して子供の心理治療を行うこと。プレイ・セラピー。遊びは言語的伝達手段の未熟な幼児や児童の場合は、もっとも有効な自己表出の手段である。遊びは現実の制約から逃れ、主体的に心的世界を構築するものであり、幼児はこの世界において自己を発見し意味を創造していくことができる。遊ぶことのできない子は問題児であり、遊ぶことは社会的、文化的成長にとって重要な意義をもっている。エリクソンは、理解ある大人から保護的承認を受け、遊びを演じ尽くすことが子供に許されているもっとも自然な自己治療の方法であるという。まさに遊びが心理療法の手段として使われる根拠もそこにある。
精神分析では、ことばを用いた自由連想法が治療の技術として使われるが、言語的表出や伝達の未成熟な幼児や児童では、遊びそのものが大人の自由連想と同じ意義をもつものと考えられる。イギリスの精神分析学者のメラニー・クラインの場合は、遊びのなかに子供の無意識が象徴的に表現されると考え、さまざまな遊具を子供に与えて自由に遊ばせて児童分析を試みようとする。たとえば、人形の手や足をもぎとることは、親に対する無意識的な敵意とか嫉妬(しっと)の表れであると解釈される。しかし、大人の自由連想と子供の遊びを同じように考えることに反対する立場もあり、フロイトの娘のアンナ・フロイトAnna Freud(1895―1982)は、遊びのなかでの子供と治療者との関係を重視しようとする。子供の心理治療でもっとも重要なことは遊びがなにを表しているか、子供の心の世界でなにが起きているかを治療者が理解することであるが、こうしたことはすべて治療者―患者の関係のなかで起きているからである。また、遊びを成長過程とみなし、心理的葛藤(かっとう)の表出、緊張の解放とみなす場合には治療技術も異なってくる。たとえば、治療者は直接に関与せず、子供の自発的遊びを援助するにとどまる方法もある。いずれにしても、遊戯療法は、幼児や児童を対象にするもっとも一般的な心理療法である。
[外林大作・川幡政道]
『D・W・ウィニコット著、橋本雅雄訳『遊ぶことと現実』(1979・岩崎学術出版社)』▽『東山紘久著『遊戯療法の世界 子どもの内的世界を読む』(1982・創元社)』▽『メアリー・R・ハワース著、斎藤万比古監訳、山崎透・佐藤至子他訳『ある少年の心の治療――遊戯療法の経過とその理論的検討』(1997・金剛出版)』▽『メラニー・クライン著、小此木啓吾・岩崎徹也責任編訳、衣笠隆幸訳『メラニー・クライン著作集2 児童の精神分析』(1997・誠信書房)』▽『エリク・H・エリクソン著、近藤邦夫訳『玩具と理性――経験の儀式化の諸段階』新装版(2000・みすず書房)』▽『日本遊戯療法研究会編『遊戯療法の研究』(2000・誠信書房)』▽『リネット・マクマホン著、鈴木聡志・鈴木純江訳『遊戯療法ハンドブック』(2000・ブレーン出版)』▽『弘中正美著『遊戯療法と子どもの心的世界』(2002・金剛出版)』
子どもに行われる心理療法の一つ。大人の心理療法が治療者との間に交わされる言語を仲介にして治療関係が成立するのに対して,子どもでは言葉による自己表現や洞察への過程が不十分なため,遊びやおもちゃを媒介にして心理療法を行う。遊びは子どもにとって本質的なものであり,非常に有効な自己表現活動であって,思いっきり遊ぶことに浄化作用,治療作用があるとされる。一般にはプレー・ルームといわれる専用遊戯室の中で行われ,部屋の外に出ないのが原則である。遊戯室内には一般に用いられるような平凡な玩具,ゲーム類およびそれを収納する棚,黒板などが配置され,故意にそれらをこわさないなどの一定のルールの範囲で,治療者が相手になって自由に遊ばせる。週1~2回,1回20~60分ずつ行う。子どもと治療者が1対1で行うが,1人の治療者が複数の子どもを扱うものを遊戯集団療法という。これらは遊びという一定のモデル状況をつくり出すことによって,自分の経験を処理し,見通し,さらに現実を支配する自我の成長をはかることを目ざしており,その理論や手技によって,児童分析(A.フロイト,M. クライン),児童中心法(アクスラインV.M.Axline),ユングの理論をとり入れた箱庭療法(D. カルフ)などがある。心理療法は基本的には患者のもつ自己治癒能力を最大限に発揮し,洞察へと導くものであるので,遊戯療法でもそれらの能力に限界のある精神遅滞児や脳障害児には行わないのがふつうである。
執筆者:中根 晃
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