近世日本の村に設けられた公的な倉庫。数ヵ村で共同のものを設けることもあり,また郷倉を設けぬ村もあった。はじめは年貢として領主に上納する米その他の生産物を村から送り出すまで,一時的に保管する目的で設置した。建築費,修繕費は領主が負担することになっていた。年貢米を保管中は村で郷蔵番を設け,村民が交代で昼夜その役を務めた。年貢を保管中火災にあったときには,領主が正式に受取りの封印をした後であるなら,領主の損失であったが,それ以前のとき,あるいは番人の怠慢,村の防火施策が不十分であったときなどは村が弁償することになっていた。盗難にあったときは,不足分だけ村が弁償する。近世中期以降,備荒貯穀制度が普及すると,その貯穀のために義倉(ぎそう),社倉として使われた。郷倉は村役人の屋敷内に設けられることもあったが,村の中央,村はずれなど,設置場所は村によって違っていた。いずれの場合でも,その敷地は年貢が免除された。
執筆者:伊藤 好一
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郷蔵とも書き、社倉(しゃそう)、義倉(ぎそう)ともいう。江戸時代、各村々、あるいは数か村に1か所設けられた米穀の収蔵倉をいう。建物は村有または官有、敷地は除地(じょち)として課税を免除されていた。設置の目的は、年貢米の保管または備荒(びこう)貯蓄のためであった。場合によっては両者を兼ねた例もある。当時、年貢は分納されていたので、これを収蔵するところがぜひ必要であったし、城下から離れた村では、そこへ運ぶ前に年貢米を一時保管しておくことも必要であった。この場合、村々では郷倉番人を置いて厳重に保管した。他方、凶作に備えて村々では、米、雑穀類を平常から農民の分限に応じて集めておき、非常用として郷倉に保管し、窮民の救済にあてた。その多くは領主による勧農政策の一環として設置された場合が多い。
[吉永 昭]
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