囲い米(読み)カコイマイ

デジタル大辞泉 「囲い米」の意味・読み・例文・類語

かこい‐まい〔かこひ‐〕【囲い米】

江戸時代幕府諸藩・郷村で備荒貯蓄米価調節・軍事用などに米を蓄えたこと。また、その米。囲いもみかこいごめ。

かこい‐ごめ〔かこひ‐〕【囲い米】

かこいまい」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「囲い米」の意味・読み・例文・類語

かこい‐まいかこひ‥【囲米】

  1. 〘 名詞 〙かこいこく(囲穀)
    1. [初出の実例]「大阪御囲米前々御払之度々御蔵奉行入札取之、落札直段を以御払申渡」(出典:日本財政経済史料‐一・財政一・第五貯穀・二積穀・享保二〇年(1735)月日)

かこい‐ごめかこひ‥【囲米】

  1. 〘 名詞 〙かこいまい(囲米)

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改訂新版 世界大百科事典 「囲い米」の意味・わかりやすい解説

囲米 (かこいまい)

江戸時代,幕府や藩がみずから,あるいは家臣・町人農民に命じて貯蔵させた米穀。長期の保存に耐える籾を用いることが多いので囲籾ともいう。幕府自身の囲米としては,幕初から年貢米の一部が米蔵に蓄えられており,1843年(天保14)には江戸浅草御蔵に14万石のほか小菅,大坂,二条,駿府など合計55万石であった。大名には,1633年(寛永10)以来,城詰米と称して宇都宮,松本,諏訪,膳所藩など要地の譜代大名に幕府米の貯蔵と詰替えを命じている。これらは幕府の全国支配の一環として軍事上や飢饉対策,米価調節に利用された。このほか米価対策として行われた囲米として,(1)幕領年貢収納量がピークに達した宝暦年間(1751-64)に,諸大名にたいし1万石につき籾1000俵の囲置きを命じた例,(2)寛政(1789-1801)初年に幕領農村に郷倉を設置したり,江戸・大坂に籾蔵を建てるなどして,農民・町人に貯籾を命じ,凶作時の夫食(ぶじき)・救米の備えとした例,(3)低米価に悩んだ文化年間(1804-18)に,大坂の豪商に囲米を命じ米価引上げを図った例などがある。また備荒貯穀として独自な囲米制度を採用している藩も多く水戸藩常平倉会津藩社倉米沢藩義倉などは著名である。
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百科事典マイペディア 「囲い米」の意味・わかりやすい解説

囲米【かこいまい】

江戸時代,幕府,大名,郷村などが軍事上あるいは備荒,または米価調節のために米をたくわえること。またはその米。実際は籾(もみ)でたくわえたから囲籾ともいう。天保期(1830年―1844年)に幕府は約55万石,諸藩は約88万石の囲米をもっていた。幕末の情勢緊迫に伴い,軍事目的で囲米が行われ米価騰貴の一因となった。→郷倉浅草御蔵
→関連項目天保の飢饉

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旺文社日本史事典 三訂版 「囲い米」の解説

囲米
かこいまい

江戸時代,幕府の命で諸藩や町人が蓄えた米
実際は籾 (もみ) で保存し,囲籾 (かこいもみ) ともいう。凶作などの備荒貯蓄を目的とするものが多く,寛政の改革で松平定信が実施したのが有名。また米価調節策としての囲米もあり,享保の改革で徳川吉宗が命じたのが有名。

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世界大百科事典(旧版)内の囲い米の言及

【天明の大火】より

…禁裏,仙洞御所,公家屋敷,二条城,所司代屋敷,東西両町奉行所なども類焼した。幕府はおりから米穀を買い占めたとして闕所(けつしよ)になった近江屋忠蔵の2万2000両のうち2万両を類焼町に配分して貸し付け,月3厘の利息で籾を備蓄したのが洛中囲米(かこいまい)の初めという。大火は大商人を含む京都商業に大きな打撃を与えた。…

※「囲い米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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