改訂新版 世界大百科事典 「都市地理学」の意味・わかりやすい解説
都市地理学 (としちりがく)
urban geography
人文地理学の一分野で,集落地理学に属する。都市域と都市の影響する範囲の地域を研究対象とする。
18世紀中葉まで,都市は単に大型の集落として村落とはあまり区別されずに,一体として集落地理学で取り扱われていたが,産業革命以後,都市が急激に発達したので,都市は村落と別個に取り扱われるようになった。すなわち,近代工業が都市に付随して発達し,その結果都市の人口は急増し,市街地の面積も膨張し,都市の数も著しく増加した。この先進諸国の第1次の都市化,さらに,第2次世界大戦後におこった世界的規模での都市化(第2次の都市化)によって都市域の急激な変化がおこった。都市地理学の研究は,それに伴い盛んに行われるようになり,都市地理学は集落地理学からあたかも分離独立したかの感がある。
元来,都市には点として見られる性質と,面として扱われねばならない性質との二面性がある。前者の性格に関しては,研究初期段階での単純な位置(交通・地形上の)的分類から,卓越機能による機能的分類を経て,階層性による都市立地論から都市群のシステム論にまで発展した。後者に関しては,初期の形態(平面型,立面型)的分類から,都市域内部での諸機能の凝集性や背離性などによる機能地域の分化や,それらの分化した地域配置による都市内部の地域構造論,さらに都市内部システム論にまで発展している。
日本の都市地理学の発達は第2次大戦前はやや遅れがみられるが,戦後は,木内信蔵《都市地理学研究》(1951)の出版以来急速な発展をみせ,世界の潮流に伍してひけをとらない。現在の日本の地理学でも,最も活発な研究活動の行われている分野である。
執筆者:田辺 健一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報