改訂新版 世界大百科事典 「配植」の意味・わかりやすい解説
配植 (はいしょく)
植物,おもに樹木を庭園,公園など造園的空間内の一定の区域に,修景,観賞,環境保全,防災などの目的に応じて,適切な場所に植えることをいう。配植計画を立てるにあたり,まず植栽目的をはっきりさせ,それに関連して配植による印象を想定する。その要素として,美,調和,安定,統一,対立,つりあい,連係,変化,反復,漸移などがある。次いで植栽場所の環境調査を行う。以上を総合して,使用植物が未定であれば適種を選定する。使用植物はその形状をあらかじめ把握し,次に配植に際しての形,本数,組合せなどを考える。植物の形については,自然型,仕立てられた人工型,その中間の折衷型があり,後の管理も配慮して適当な形を選ぶ。植栽本数には,単植,多植(双植,3植など)があり,多植では植栽間隔,密度,様式が問題となる。植栽様式には,列植(直線植,曲線植など,1列植,2列植など),寄植え,群植などがある。樹木では,高木と低木,針葉樹と広葉樹,常緑樹と落葉樹,陽樹と陰樹などそれぞれ対立する形状をもち,樹種の組合せにあたっては,その差異をつかんでおく必要がある。配植に際して,基本的には土壌改良を行うことが望ましい。また使用植物が決められており,植栽地の環境が不適当であれば,それを克服するための配植が必要となる。例えば耐寒性の弱い植物は北西風を防ぐ暖かい場所へ,大気汚染物質に弱い植物は周りを植込みで囲んだ場所へ植える。管理には放任型と管理型がある。これは配植目的と植栽間隔,密度などに大きく関係する。管理作業は,樹木では剪定(せんてい),刈込みが主体である。
日本庭園の配植
日本庭園は江戸時代までに世界に独自のものがつくり上げられたが,江戸時代の後期に,これが様式化して,庭園の配植にも定まった型がみられるようになった。庭園の中心となる木を主木(真木)といい,大木,姿が端正,仕立てやすい種類がよく,アカマツなどの針葉樹や常緑樹が多く用いられるが,樹形に風格があるウメなどの花木も使われる。主木の傍らにあってこれを助ける木を副主木(副木)といい,同種のものが植えられることが多い。副主木と反対のやや離れた位置にあって,主木と対照されるものを添木(対)といい,主木と逆の感じのもの,つまり主木が常緑樹であれば落葉樹を用いる。主木の前方の下部に植える低木を前付けといい,主木の奥に控えるように位置する木を控えという。以上のように庭園内である位置に目的をもって植栽される木を役木という。江戸時代の造園書《築山庭造伝》(前編1735,後編1828)には多くの役木が記載されている。そのおもなるものを挙げると,寂然(じやくねん)木(庭の東寄りの常緑の植込み),夕陽(せきよう)木(庭の西寄りの落葉樹),流枝(なげし)の木(泉水に臨むように植栽),鉢請(はちうけ)の木(縁先の手水鉢の先に植栽),灯籠控(とうろうひかえ)の木(灯籠の後ろまたはわきに植栽)などがある。
→庭園
執筆者:北村 文雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報