日本大百科全書(ニッポニカ) 「酢酸アミル」の意味・わかりやすい解説
酢酸アミル
さくさんあみる
amyl acetate
酢酸とアミルアルコール(1-ペンタノール)のエステル。ナシに似た香気をもつ液体で、ナシ油ともいう。アミルアルコールに8種の異性体があるので、酢酸アミルにも同数の異性体が存在する。市販の工業用酢酸アミルは、酢酸イソアミルCH3COO(CH2)2CH(CH3)2、酢酸n-アミルCH3COO(CH2)4CH3および酢酸sec-アミルCH3COOCH(CH3)CH2C2H5の混合物で、アミルアルコールまたはフーゼル油に過剰の酢酸と少量の硫酸を加えて製造する。沸点範囲120~146℃、比重0.870~0.880。食品用香料、ニトロセルロース、ラッカーなどの溶剤、セルロイド、接着剤の製造、織物用染料の溶剤などにも用いられる。
[廣田 穰]