日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸栄養湖」の意味・わかりやすい解説
酸栄養湖
さんえいようこ
水素イオン濃度(pH)5以下の強酸性を示す非調和型の湖で、有機酸性湖と無機酸性湖に二分される。泥炭地や高層湿原に多い有機酸性湖は腐植栄養湖としても分類されている。無機酸性湖は火山や硫黄(いおう)泉地域に多い。硫酸、塩酸などの無機酸を主成分とする。水色は一般に青いが、白みの強いものや鉄分を多量に含む湖では赤褐色をしている。電解質に富み、硫酸塩、鉄、マンガン、カルシウム、塩酸塩などを含むが、その主成分によって水質、水色が著しく異なる。生物生産力は低く、生息種数は少ないが、特殊な種類が多く発生することもある。大形植物ではアシ、フトイ、蘚(せん)類のウマスギゴケ、魚類は少ないが青森県の宇曽利山湖(うそりやまこ)(恐山(おそれざん)湖)などでウグイが報告されている。植物プランクトンとしては特定の珪藻(けいそう)、藍藻(らんそう)、細菌類では硫黄細菌がみられる。オカメミジンコ、ツボワムシなどの動物プランクトンや底生動物としてユスリカが報告されている。
日本では宇曽利山湖のほか、pH1.4の宮城県の潟沼(かたぬま)、蔵王御釜(ざおうおかま)、福島県裏磐梯(うらばんだい)の五色沼(ごしきぬま)湖沼群が有名である。
[沖野外輝夫]
『沖野外輝夫・半田暢彦ほか著『湖沼調査法』(1987・古今書院)』▽『飯田貞夫著『やさしい陸水学――地下水・河川・湖沼の環境』(1997・文化書房博文社)』▽『沖野外輝夫著『湖沼の生態学』(2002・共立出版)』