コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

酸性雨 さんせいう acid rain

翻訳|acid rain

9件 の用語解説(酸性雨の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

酸性雨
さんせいう
acid rain

硫黄酸化物窒素酸化物などの汚染物質を取り込んで酸性を示す雨。雨は一般に二酸化炭素 (炭酸ガス) を吸収してpH 6.5~5.5程度の微弱な酸性を示すが,大都市や工場地帯では大量の酸性の汚染物が排出されるため強い酸性を示す雨がみられる。

本文は出典元の記述の一部を掲載しています。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

知恵蔵2015の解説

酸性雨

硫酸や硝酸を含む水素イオン指数pHが5.6以下の強い酸性の雨。化石燃料を燃やすと硫黄酸化物窒素酸化物が発生して硫酸や硝酸を生成、大気を酸性にする。霧や雪、霜にも溶け込む。1970年代以降、欧州や北米で酸性雨による森林の衰退が問題化。79年に欧州経済委員会が長距離越境大気汚染条約(ウィーン条約)を締結、モニタリングと削減対策に乗り出した。米国とカナダも2国間協定を結んだ。日本でも北関東赤城山奥日光神奈川県の丹沢などで森林の衰退や立ち枯れが目立つようになった。全国的にpH4台の酸性雨が観測されているが、森林の衰退との因果関係は明確ではない。中国、朝鮮半島などからの飛来も多く、政府は2001年1月、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET:Acid Deposition Monitoring Network in East Asia)をスタート。中国、韓国、タイなど13カ国が参加、40カ所以上で測定。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)

酸性雨

主として化石燃料の燃焼により生じる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などが原因で生成された、酸性の強い雨、霧、雪。pH5.6以下で、時には2〜3になることもある。湖沼の魚類、土壌、森林の生態系などに影響を与える。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉の解説

さんせい‐う【酸性雨】

大気中の二酸化硫黄窒素酸化物が溶け込んでいて酸性度の強い雨。動植物その他に被害を与える。

出典|小学館 この辞書の凡例を見る
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

百科事典マイペディアの解説

酸性雨【さんせいう】

pH5.6以下を示す雨,雪などの総称。硫黄酸化物(SO(/x)),窒素酸化物(NO(/x))などが雲粒や雨滴に吸収されて生ずる。原因物質の硫黄酸化物は風に運ばれて長距離を移動し,その過程で雨や雪などに取り込まれて強い酸性の物質(硝酸硫酸)として降下,広い地域に被害を及ぼす。
→関連項目環境外交ストックホルム会議生物多様性西暦2000年の地球大気浄化法

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
All Rights Reserved. Copyright (C) 2015, Hitachi Solutions Create,Ltd. ご提供する『百科事典マイペディア』は2010年5月に編集・制作したものです

栄養・生化学辞典の解説

酸性雨

 石油などの燃焼に由来する二酸化硫黄硫化水素,窒素酸化物に由来する硝酸などが空気中に存在し,それが雨水に溶けて酸性の雨水が降る現象.環境に甚大な被害をもたらす原因の一つ.空気中の二酸化炭素によって雨水はpH5.6になるのでそれ以下の雨の場合を言うことが多い.

出典|朝倉書店
Copyright (C) 2009 Asakura Publishing Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版の解説

さんせいう【酸性雨 acid precipitation】

pH5.6以下を示す雨や雪などの総称であり,湿性大気汚染ともいう。大気中には人工的に放出された汚染物質や,火山,土壌,成層圏など天然源からの汚染物質が含まれている。降雨や降雪はこれらを除去する重要な自然浄化作用である反面,近年の工業化によって降雨にさまざまな有害物質が含まれるようになった。酸性雨もその現れの一つで,ふつうの雨はpH5.6前後であるが,硫黄酸化物,窒素酸化物,塩酸,酸性のエーロゾルなどが雲の中で雲粒に吸収されたり雨滴に捕捉(ほそく)されると,pH2~4のきわめて酸性の強い雨が降る。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
All Rights Reserved. Copyright (C) 2015, Hitachi Solutions Create,Ltd. 収録データは1998年10月に編集製作されたものです。それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。また、本文中の図・表・イラストはご提供しておりません。

大辞林 第三版の解説

さんせいう【酸性雨】

一般に水素イオン指数(pH)の値が5.6以下の降水。普通の雨に比べて酸性が10倍以上も強い。石炭・石油などの燃焼によって生ずるイオウ酸化物・窒素酸化物が原因。陸水の酸性化、土壌の変質、森林の枯死をもたらし、生態系に影響を与える。 → 酸性霧

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

酸性雨
さんせいう
acid rain

酸性度の強い雨。一般に酸性雨といわれるが、降雪の場合も含まれるので、酸性降水というほうがより正確である。[横田弘幸]

酸性雨の性状と原因

蒸留水はph(ペーハー)(水素イオン濃度)7.0で中性だが、地球の大気には二酸化炭素CO2が含まれているため、大気中を降り落ちてくる雨は、一般には5.6程度の酸性を示す。これよりもph値が小さく、酸性の度合いが強いものを酸性雨とよんでいる。これは大気汚染物質の硫黄(いおう)酸化物SOxや窒素酸化物NOxが、大気中で硫酸や硝酸に変わり、それが雨粒に取り込まれてできるとされる。また、雨だけでなく、霧や雪に含まれるもの(まとめて湿性沈着wet depositionという)や、乾いた粒子状、ガス状の形で地上に落ちてくることもある(乾性沈着dry deposition)。原因となる大気汚染物質は、ガソリンや重油、石炭などの化石燃料を使う工場や自動車から排出される。しかし、それによってできる酸性雨は、この発生源から数千キロメートルも離れた所で降ることもある。このためヨーロッパでは、イギリスやドイツの工業地帯からはるかに遠く離れた北欧で酸性雨が降る(南ないし南西の気流のときにこの影響が大きい)という事態となり、国境を越えた広域的な取り組みが必要である。[横田弘幸]

酸性雨の歴史

酸性雨は、19世紀なかばイギリスなどで工業化が急激に進むにつれてその被害が出始めたが、これを最初に指摘したのはイギリスの化学者スミスRobert A. Smith(1817―84)で1872年のことであった。この年、彼は『マンチェスターのスモッグ』という論文のなかで、雨が酸性を帯びていることを指摘している。しかし実際のデータに基づき酸性雨を解明したのは、スウェーデンの土壌学者スバンテ・オーデンSvante Odenで1967年のことであった。彼は酸性雨の分布を広範囲にわたり調べたのち、それが遠方から運ばれてくる亜硫酸ガスと窒素酸化物に起因することをつきとめた。オーデンはこの論文で、酸性雨が水質、土壌、森林、建造物に今後大きな被害を与え、「人類にとって化学戦になろう」と警告している。オーデンはこの業績により今日では「酸性雨解明の父」とよばれている。[根本順吉]

外国における被害状況

地上に降り注ぐことで、さまざまな被害を引き起こす。まず、湖沼、河川の水が酸性化し、湖底などから有害な金属が溶出して、魚類などの生息環境を破壊する。また、土壌が酸性化し、森林が衰退する。あるいは樹木に直接、降りかかることで樹木が枯れる。こうした自然への影響にとどまらず、大理石などの石像が酸性雨で溶けてしまうという文化財への被害も心配されている。
 主として北欧などのヨーロッパ各地およびアメリカ北東部、カナダ東部、中国などが、酸性雨によって広域にわたり汚染されている。具体例をあげるとノルウェーにおいてはpHの値が0.5~1.0減少した(これは酸性度が7~10倍になることを意味する)ことにより、1500余りの湖水で魚類がいなくなってしまった。オンタリオ湖の東方にあるアメリカのアディロンダック公園は、汚染源から数百キロメートルも離れているが、酸性雨によって、その公園の澄みきった湖からはカエルがいなくなり、以前は豊富にいたマス類、スズキ類、カワカマスなどの魚は姿を消した。
 また、ドナウ川の水源近くのドイツのシュワルツワルト(黒い森)では、pHが10年間で5~6から3.2に低下し、一時的にはレモン汁なみの2.8を記録したことがあり、このため常緑の針葉樹の成長が止まり、幹の中心部に空洞ができて、病める針葉樹を切り倒す無残な光景が至る所でみられるという。
 スウェーデンでは約8万5000か所ある湖沼のうち1万5000か所が酸性化し、そのうちの4500か所で魚が死滅するなど、各地で生態系に大きな打撃を与えている。また、石や青銅でつくられた文化財の腐食が進むなどの被害も報告されている。
 急速な工業化を続ける中国国内でも酸性雨は「空中鬼」と恐れられ、重慶(じゅうけい/チョンチン)などの工業都市では建物に使われている鉄の腐食が激しく、各地の森林にも被害が出ている。酸性雨はヨーロッパなどでは国境を越えた問題であるため、この防除には一国だけの規制では不十分であり、国際的な協力を必要とする重大な問題である。[横田弘幸]

日本における被害状況

日本で酸性雨が観測されたのは昭和30年代に、三重県四日市市でpH2の雨を記録したのが最初である。その後1974年(昭和49)7月に群馬県、埼玉県、栃木県など関東内陸で酸性雨が降り、数万人の人が目の刺激や皮膚の痛みを訴える被害が出た。さらに81年6月26日には群馬県前橋市で、降り出してからの1ミリメートルの雨にpH2.88という関東地方の観測値としては最高の酸性雨を記録した。このときは埼玉県本庄(ほんじょう)市でpH3.01、熊谷(くまがや)市でpH3.28、神奈川県川崎市でpH3.10などの観測値を示した。
 1981年6月の酸性雨のときの気圧配置を調べてみると、本州南岸沿いに梅雨前線が停滞しており、雲底の高さは東京で200メートル、前橋で300メートル、雲の厚さは約2キロメートルであったが、この雲層の中に京浜・京葉地帯の煙突群からの排ガスが入り込み、水と反応して硝酸、硫酸となり、濃縮されながら北方に運ばれたものと推定されている。
 日本での酸性雨の状況は、環境省(旧環境庁)が調査を続けているが、1993年(平成5)から97年までの第三次調査によると、期間中の酸性雨のphは、全国平均で4.8から4.9を記録した。この数値は第一次調査以来、ほとんど変化はなく、生態系への明確な影響も明らかになっていない。しかし、すでに大きな被害の出ている欧米とほぼ同程度の酸性度で、今後も被害が出ないとの保証はなく、観測や土壌、植生などへの影響調査の継続が求められている。[横田弘幸]

対策

国境を越えた環境破壊であるため、国際的な取り組みが不可欠で、ヨーロッパを中心に1979年「長距離越境大気汚染条約」が締結された。その後のヘルシンキ議定書(1985)でSOx排出量を1993年までに1980年排出量と比較して最低30%削減が、さらにソフィア議定書(1988)でNOx排出量を1987年時点の水準に凍結することが定められるなど、加盟各国で酸性雨対策が進められている。
 また、日本の酸性雨の一因として中国大陸からの大気汚染物質の影響も指摘されており、日本国内の対策だけではなく、大陸での公害防止への援助も大きな意味をもっている。同時に日本はアジア近隣諸国とともに酸性雨の実態を把握するため「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想」を進めている。[横田弘幸]
『石弘之著『酸性雨』(岩波新書)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) この辞書の凡例を見る
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典内の酸性雨の言及

【亜硫酸】より

… 3H2SO3―→2H2SO4+S+H2O大気中に放出された二酸化硫黄は浮遊粒子表面をおおった水に溶けて亜硫酸となり,これが光化学反応によって硫酸に変化するのが,著しい大気汚染をもたらす〈硫酸ミスト〉発生の原因とされる。また雨に溶けて亜硫酸となるのが酸性雨の原因でもある。亜硫酸塩は一般に無色で(たとえばNa2SO3・7H2O),水溶液は還元性を示し,また湿った空気中ではたやすく酸化されて硫酸塩となる。…

※「酸性雨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
All Rights Reserved. Copyright (C) 2015, Hitachi Solutions Create,Ltd. 収録データは1998年10月に編集製作されたものです。それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。また、本文中の図・表・イラストはご提供しておりません。

酸性雨の関連キーワード水素イオン水素イオン濃度pH水素イオン指数酸性度ピーエッチペーハー計水素イオン活量pH(ペーハー)(水素イオン濃度指数)海の酸性化

今日のキーワード

トランスアジア航空

台湾・台北市に本拠を置く航空会社。中国語名は復興航空。1951年、台湾初の民間航空会社として設立。83年に台湾の国産実業グループに経営移管され、組織改編を実施した。92年に国際チャーター便の運航を始め...

続きを読む

コトバンク for iPhone

酸性雨の関連情報