この語は最初は学問的というよりは行政的な立場から定義がなされた(厚生省《重症心身障害児療育実施要項》1963)。そこでは,重症心身障害児とは,(1)重度の身体障害があってリハビリテーションが著しく困難であり精神薄弱を伴う者,(2)重症の身体障害もしくは精神薄弱があって,家庭内療育はもとより重度児を対象とする肢体不自由児施設,精神薄弱児施設でも指導,療育が不可能,不適当の者,とされた。その後,1966年の児童福祉法一部改正によって新たな定義がなされた(43条の4)が,それは上記の定義をやや具体的にしたもので,基本には変更がない。日本では1961年にはじめて重症心身障害児施設が設置され(東京,島田療育園),重症心身障害児に光が当てられはじめた。そして医療と保護と教育を統一する療育実践の積み重ねのなかで,しだいに理論的検討も進んできた。すなわち,十分な医療的管理のもとで生命の維持,健康の増進を重視し,食事,着脱衣,排便,洗面などの日常生活の介助も発達促進の観点でその方法を吟味して実践を進めれば,発作などによる退行を防止し,極微ながらも発達を達成していけること,それゆえにまた学校教育の対象としうることなどである。今日では,これらの子どもたちを発達の可能性をもち,人間発達の初期の段階で生活し活動している存在として理解する傾向が強まっている。
→児童福祉施設
執筆者:茂木 俊彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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