野蒜(読み)ノビル

デジタル大辞泉 「野蒜」の意味・読み・例文・類語

の‐びる【野×蒜】

ヒガンバナ科多年草山野に生え、高さ約60センチ。全体ニラのようなにおいがする。球形鱗茎りんけいから管状の葉を出し、夏、花茎の先に白紫色の花やその変化したむかごがつく。鱗茎若葉食用にする。ぬびる。ねびる。ひる。 春 花=夏》「引抜けば土塊つちくれ躍る―かな/みどり女」

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精選版 日本国語大辞典 「野蒜」の意味・読み・例文・類語

の‐びる【野蒜】

  1. 〘 名詞 〙 ユリ科の多年草。各地の山野に生える。高さ三〇~八〇センチメートル。全体にニラやネギに似た臭気がある。鱗茎は広卵形で白い。葉は細長い管状で長さ約三〇センチメートル。夏、茎頂に黒紫色で球状の「むかご」にまじえて長柄をもつ小さな花を半球状につける。花は六花被をもち白色で裏は紫色。葉・鱗茎は食べられ、また鱗茎をおろして麦粉と練ったものを塗れば打撲傷に効くという。漢名に山蒜を当てる。ひる。ねびる。ぬびる。《 季語・春 》

▼のびるの花《 季語・夏 》

  1. [初出の実例]「いざ子ども 怒毘流(ノビル)摘みに 蒜摘みに 我が行く道の」(出典古事記(712)中・歌謡)
  2. 「猪の藪ほりかへす野ひるかな〈野明〉」(出典:俳諧・落柿舎日記(1774))

ぬ‐びる【野蒜】

  1. 〘 名詞 〙 ( →ぬ(野) ) ⇒のびる(野蒜)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「野蒜」の意味・わかりやすい解説

野蒜
のびる

宮城県中東部、東松島市(ひがしまつしまし)の一地区。鳴瀬川河口右岸にあり、明治までは一寒村であったが、明治政府の東北開発の拠点として野蒜築港工事が推進された。1884年(明治17)の台風などで中止、廃港となった。野蒜海岸一帯は奥松島といわれる。JR仙石(せんせき)線野蒜駅がある。また、鳴瀬川河口と松島湾を結ぶ東名運河(とうなうんが)が通じ、2004年(平成16)には洪水防止のための野蒜水門が完成した。

[編集部]

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動植物名よみかた辞典 普及版 「野蒜」の解説

野蒜 (ノビル・ネビル)

学名:Allium grayi
植物。ユリ科の多年草,薬用植物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の野蒜の言及

【東北地方】より


[交通の発達]
 明治維新当時の交通は舟運が中心で,港としては河口港と河岸,および河口港に比較的近い風待港が発達していた。明治政府は全国的に幹線鉄道の建設をはじめるとともに,東北地方の後進性の脱却を目指して洋式港を仙台湾の鳴瀬川河口の野蒜(のびる)に建設しはじめたが,1884年の台風で防波堤が破壊され,築港計画は放棄された。東北地方の交通は,奥羽山脈が障害となるため,南北方向の発達が著しい。…

【鳴瀬[町]】より

…漁業は宮戸島でノリ,カキの養殖が盛んなほか,定置網やサケの孵化,放流なども行われる。複雑な海岸線をもつ宮戸島は野蒜(のびる)海岸とともに奥松島と呼ばれ,奇勝の嵯峨渓や松島四大観の一つである大高森(標高106m)などをもつ景勝地で,旅館,民宿など宿泊施設も多い。丘陵部で切り出される凝灰岩は野蒜石の名で,江戸時代末から建築用材として全国に移出されていたが,現在産出量は減少した。…

※「野蒜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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