金幣猿島郡(読み)きんのざいさるしまだいり

  • きんのざい さるしまだいり

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

歌舞伎(かぶき)脚本。時代物。5幕。4世鶴屋南北(なんぼく)作。1829年(文政12)11月、江戸・中村座で5世瀬川菊之丞(きくのじょう)の滝夜叉姫(たきやしゃひめ)・お清、中村芝翫(しかん)(後の4世歌右衛門(うたえもん))の坂東(ばんどう)太郎・藤原忠文(ただぶみ)らにより初演。南北は狂言上演中の11月27日に没したので、この作品が絶筆となった。『前太平記(ぜんたいへいき)』を世界にした顔見世狂言で、平将門(まさかど)の娘滝夜叉と坂東太郎実は藤原純友(すみとも)が再起を企てる話を主筋にして、源頼光(よりみつ)に恋したすえ、母如月尼(きさらぎに)の手にかかる娘お清(清姫)と、頼光の許嫁(いいなずけ)七綾姫(ななあやひめ)に横恋慕したあげく悶死(もんし)する藤原忠文などを絡ませた作。滝夜叉に将門の霊が宿り、清姫の怨念(おんねん)と忠文の亡魂が合体、2組の男女双面(ふたおもて)をみせるのが趣向である。とくに後者は二番目所作事として常磐津(ときわず)、富本(とみもと)、長唄(ながうた)の三方掛合いによる『道成寺思恋曲者(こいはくせもの)』に仕組まれ、これが『奴(やっこ)道成寺』の基礎になった。作品全体の上演は長く絶えていたが、1964年(昭和39)以降、武智(たけち)鉄二、戸部銀作によりそれぞれ異なる補綴(ほてい)台本で復活されている。

[松井俊諭]

『『鶴屋南北全集12』(1974・三一書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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