精選版 日本国語大辞典 「暫」の意味・読み・例文・類語
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歌舞伎狂言。時代物。1幕。初世市川団十郎初演の演目の一部に〈しばらく,しばらく〉と声をかけて登場し,悪人を追い散らす場面があった。初演は1692年(元禄5)正月江戸森田座の《大福帳朝比奈百物語》というが,現存の狂言本で,その内容をつかめるのは97年の《参会名護屋》まで下る。2世団十郎もこの荒事の場面を踏襲し,以来11月顔見世狂言の三建目(序幕)に不可欠のものとなった。歌舞伎十八番の一つに加えられたときから《暫》の俗称が狂言外題として定着した。現行の脚本は,1895年,9世団十郎上演のものを基本とする。福地桜痴によって改訂されたもの。鶴岡八幡などの社頭に,悪公卿(ウケと称する)が青い隈の化粧で登場し,腹を出した赤っ面の家来(腹出しまたは中ウケと称する)たちに命じ,自分に従わない善良な男女(太刀下と称する)を斬ろうとするそのとき,揚幕から〈しばらく〉と声をかけて主人公が登場する。主人公は〈世界〉によって名称を異にするが,現在は鎌倉権五郎景政として上演されることが多い。鬘(かつら)は五本車鬢(ごほんくるまびん)に白い力紙と烏帽子をつける。顔は紅の筋隈,衣装は胴襦袢に胸当,白地に萌葱(もえぎ)色の向い鶴菱模様の上着。その上に三升の紋をつけた柿色の素袍に長袴。素袍の袖には,籐を入れてつっぱらせるので,三升紋の凧を両腕に持ったよう。大小の刀のほかに2m余の大太刀を差して現れる。この独特の扮装は荒事の主人公にふさわしい。花道のほぼ中央で止まって〈つらね〉を述べる。追い返そうとする悪人方を寄せつけず,舞台へ来て肌をぬぎ,仁王襷となり,元禄見得をきる。大太刀を抜いて,仕丁たちの首を一度に斬り落とし,善人たちを助け,大太刀を肩にして〈ヤットコドッチャウントコナ〉の掛声につれて花道を引き返す。50分余の1幕であるが,構成の奇抜さ,色彩の豊かさなど,典型的な江戸歌舞伎の舞台は,歌舞伎の醍醐味を満喫させる。
→荒事 →女暫
執筆者:鳥越 文蔵
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歌舞伎(かぶき)劇。時代物。1幕。「歌舞伎十八番」の一つ。公卿(くげ)の悪人が家来に命じて善人たちを殺そうとするとき、超人的な豪傑の主人公が「しばらく」と大声かけて登場、悪人どもを翻弄(ほんろう)して善人たちを救う。主人公は角前髪(すみまえがみ)の鬘(かつら)に紅の筋隈(すじくま)、柿(かき)色の長素袍(ながすおう)、大太刀(おおたち)という扮装(ふんそう)で、花道で「つらね」とよぶ祝言的な長台詞(ながぜりふ)を述べるのをはじめ、終始「荒事(あらごと)」の典型をみせる。敵役(かたきやく)の中心は公卿悪(くげあく)といわれる役柄で、通称「ウケ」、手下の家来たちは大きく腹を出した扮装なので、俗に「腹出し」または「中(なか)ウケ」、斬(き)られそうになる善人側の若殿・姫・家老らは「太刀下(たちした)」とそれぞれよばれ、その他の登場人物も役柄はほぼ定まっている。主役が「しばらく」と声をかけて登場するのが印象的で、役と演出様式、さらには場面の通称として定着したもの。その最初は初世市川団十郎が1692年(元禄5)に演じた『大福帳朝比奈百物語(だいふくちょうあさひなひゃくものがたり)』といわれるが、現存の狂言本で内容がつかめるのは1697年の『参会名護屋(さんかいなごや)』。この様式は2世団十郎も踏襲、以来市川家の家の芸となり、毎年11月の顔見世狂言の一番目三建目(みたてめ)(序幕)にかならず入れられ、台本はそのつど新作されたが、大筋は決まったものとして後世に伝わった。明治以後は独立した一幕として上演され、1895年(明治28)9世団十郎が演じたとき、現在の脚本の定型が完成、近年は役名も主役が鎌倉権五郎景政(かまくらごんごろうかげまさ)、ウケが清原武衡(きよはらのたけひら)とほぼ決まっている。なお、変型として、女方(おんながた)が演じる『女暫』があるが、これは1746年(延享3)嵐小六(あらしころく)によって始められた。
[松井俊諭]
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