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金属貨幣 きんぞくかへいcoin

翻訳|coin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

金属貨幣
きんぞくかへい
coin

素材として金属を用いた貨幣で,硬貨とも呼ばれる。貨幣経済の初期には貝殻,家畜,石塊,皮革などが貨幣として用いられていたが,しだいに体積,重量に比べて価値が高く,分割や運搬が容易で耐久性に富み,品質が一定で価値の変動が少ないという,貨幣に適する性質をもった金,銀,銅などの金属が使用されるようになった。商品の取り引きが商品と貨幣の交換を原則とするようになると,そのつど貨幣金属の質を検査し量を測定する手間と不便を避けるため,一定の純分をもつ特定金属の一定量に一定の形を与えることによって質と量を確認できるようにした鋳造貨幣鋳貨)が製造されて広く流通するようになった。なかでも金貨と銀貨はすでに前7~前6世紀にリュディア王国やペルシア帝国で鋳造され,ギリシアやローマでも広く流通した。13世紀以降になるとフロリン金貨(フィレンツェ),ベネチアの金貨,イギリスでつくられたソブリン金貨など,金貨がヨーロッパ各地で近代的な通貨として鋳造,使用されるようになった。16世紀にはアメリカ大陸の銀がスペインを経由してヨーロッパに大量に流入し,金銀比価を変動させ物価の高騰を引き起こして,貨幣制度の統一と改革を促した。イギリスではすでに 11世紀にウィリアム1世によって銀本位制度が採用されていたが,17世紀のギニー金貨以後は法定比価は定めないで金銀両貨を本位貨幣とする併行本位制度に移り,1816年にジョージ3世によって世界で最初の金本位制度が確立された。その後 1870年代にドイツ,フランス,ベルギーなどヨーロッパ諸国が複本位制度から金本位制度に移り,1897年に日本が,そして 1900年にはアメリカ合衆国も金本位制度に移行して,世界の主要国の本位貨幣はすべて金となったが,国によっては必ずしも金貨が通貨として一般的に流通していない場合もあった。1930年代の大不況を経て各国が金本位制度を離脱し管理通貨制度に移行してからは,基本通貨は中央銀行券となり,金属貨幣としては額面より価値の低い金属を素材とする補助貨幣だけが流通しているにすぎない。
なお日本では,7世紀後半に銅銭の富本銭,8世紀に銅貨,銀貨,金貨が鋳造され,江戸時代には貨幣制度も整備されて大判小判その他の金貨や多くの銀貨が鋳造されて流通していた。明治初期の複本位制度のもとでも 20円,10円,5円,2円,1円の金貨を鋳造して本位貨幣とし,4種類の銀貨,4種類の銅貨を補助貨幣とした。1897年本格的な金本位制度移行後は 20円,10円,5円の 3種の金貨,50,20銭,10銭の銀貨がつくられていた。第1次世界大戦後,金本位制度を廃止し,以後金貨はつくられていないが,1957~67年には 100円銀貨が補助貨幣とされていた。今日では,100円(1967以降白銅貨),50円(旧ニッケル貨,1967以降白銅貨),10円(青銅貨),5円(黄銅貨),1円(旧黄銅貨,1955以降アルミ貨)があるほか,1982年からは 500円(白銅貨,2000以降ニッケル黄銅貨)が発行されている。また,1964年の東京オリンピック競技大会や 1970年の日本万国博覧会の際には記念銀貨,1986年には昭和天皇在位 60年記念の金貨・銀貨が製造された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

金属貨幣
きんぞくかへい

金属を素材とする貨幣をさし、素材価値を有することから紙券などと区別される。金属、とくに貴金属はその自然的属性が貨幣に適していたため、古くから貨幣として用いられた。当初は授受の際その品質を確かめ、目方を量って用いる秤量(ひょうりょう)貨幣であったが、しだいに一定の純分と重量をもつ鋳造貨幣へと発展した。[齊藤 正]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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