1897年(明治30)3月公布、同年10月施行された日本の貨幣に関する法律。貨幣の製造、発行の権限は政府に属するものとし、「純金ノ量目七百五十ミリグラムヲ以(もっ)テ価格ノ単位ト為(な)シ之(これ)ヲ円ト称」し、円の100分の1を銭、銭の10分の1を厘と定めた。貨幣法に基づいて鋳造されることになった金貨、銀貨、ニッケル貨、青銅貨の貨幣9種のうち、金貨3種は無制限法貨、他は補助貨とされ、また銀兌換(だかん)をもって発足した兌換銀行券条例は金兌換と改正された。貨幣法の制定は、日清(にっしん)戦争後に清国から得た賠償金に基礎を置くが、これにより明治初年以来の懸案であった金本位制度の基盤が確立され、先進諸国と対等の立場で国際取引を行うことが可能となったわけで、日本近代化のうえできわめて大きな意義をもつものであった。1917年(大正6)9月、第一次世界大戦下に金輸出禁止の措置をとり、金本位制を停止した。1930年(昭和5)1月、金輸出禁止を解いて金本位制に復帰したが、翌31年12月にふたたび金本位制から離脱し、管理通貨制への第一歩を印すに至った。1938年(昭和13)6月、臨時通貨法によって補助貨の量目軽減が図られ、以後同法によって日本の貨幣制度が定められた。こうして管理通貨制度の下では、貨幣法の内容は一部を除いてほとんど空文化することになった。1988年、新貨幣法の施行とともに貨幣法は廃止された。
[岡田和喜]
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日清戦争の賠償金2億3150万テール(邦貨換算約3億6000万円)を準備金として金本位制を定めた法律。1897年(明治30)10月1日施行。同法は純金の量目2分(0.75g)をもって価格の単位と定め,円と称し,貨幣の算則は十進法を採用,円・銭・厘の貨幣単位を定めた。また1円金貨幣を本位貨幣として無制限通用を認めるとともに,銀銅貨幣を1円までの補助貨として制限通用とすることを規定。
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…兌換銀行券の発行については,1888年同条例の改正によって正貨(銀貨)準備のほか一定の保証発行限度と制限外発行が認められる保証準備屈伸制限制度が採用された。97年貨幣法の制定によって金本位制に移行したが,第1次大戦中の1917年に停止,30年に再開(金輸出解禁)されたが,翌31年に再停止(金輸出禁止・金兌換停止)され,兌換銀行券は不換銀行券となった。32年保証発行限度は1億2000万円から10億円に引き上げられ,実質的に管理通貨制に移行した。…
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[歴史]
最も早い時期に金本位制を法的に確立したのはイギリスである。1816年にイギリスはソブリンsovereignと名づけられた1ポンド金貨,ソブリン金貨を鋳造し,これを法定通貨として,この平価にもとづいてイングランド銀行券はこの金貨と交換されることとなった(貨幣法Coinage Act)。イングランド銀行法により銀行券と金との関係がはっきりと規定されたのが44年なので,この年をもって金本位制確立とみる見解もある。…
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