鉤虫症

内科学 第10版 「鉤虫症」の解説

鉤虫症(線虫症)

 鉤虫症は小児を中心に世界人口の10%以上が罹患している.原因としてAncylostoma duodenale(ズビニ鉤虫;インド,中国,日本,地中海地方)とNecator americanus(アメリカ鉤虫;アフリカ,アジア,アメリカ大陸の熱帯地方)が存在する.日本でも戦前までは多くの感染者が認められ,若菜病と称されていた. 成虫は10 mm前後で,2年以上生存しうる.糞便中に排出された虫卵は幼虫(ラブジチス型幼虫,フィラリア型幼虫)へと成長する.フィラリア型幼虫は土壌よりヒトの皮膚を貫通し肺を経て消化管に至る.成虫は小腸壁に吸着・吸血し,虫卵を糞便に排泄する. 鉤虫感染症はしばしば無症候性であるが,以下の症状を伴う.①皮膚瘙痒(ground itch)や幼虫移行症(larva migrans)を合併する.②ときにLöffler症候群を合併する場合があるが,回虫より軽症であることが多い.③感染初期時(特に初回)には,悪心・嘔吐下痢腹痛を自覚する場合がある.米国兵士や旅行者が熱帯地方の土壌に暴露後30~45日後に発症する場合がある.④慢性的栄養障害は重要である.1匹の鉤虫は1日に0.03~0.1 mLの血液を消費し(Farizら,1969),重症感染では500~1000虫体が寄生していると推定される.鉄欠乏性貧血,低蛋白血症,重症貧血,心不全,浮腫,成長遅延などが生じる. 診断の基本は便の虫卵検査である.症状が軽症な場合には集卵(飽和食塩水浮遊法)が必要である.
 貧血の治療は鉄の補充でも改善するが,以下の抗寄生虫薬が必要である.①パモ酸ピランテル10 mg/kg(単回服用).保険適応有.②アルベンダゾール400 mg(単回服用).保険適応外.③メベンダゾール200 mg(分2)3日間.保険適応外. 感染予防には下水道の衛生化や皮膚と土壌の直接接触を避けることだが,実施が困難である.そのためハイリスク地域では感受性集団の3~4カ月ごとの定期的集団治療が行われている.[立川夏夫]
■文献
Farid Z, Patwardhan VN, et al: Parasitism and anemia. Am J Clin Nutr, 22: 498-503, 1969.
Stolk WA, de Vlas SJ, et al: Anti-Wolbachia treatment for lymphatic filariasis. Lancet, 365: 2067, 2005.

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家庭医学館 「鉤虫症」の解説

こうちゅうしょうじゅうにしちょうちゅうしょう【鉤虫症(十二指腸虫症) Hookworm Disease (Ancylostomiasis)】

[どんな病気か]
 1cmぐらいの各種の鉤虫が寄生しておこる病気です。日本ではズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫によるものが大部分を占めています。幼虫が付着している野菜を食べたり、皮膚から幼虫が侵入することで感染します。
[症状]
 鉤虫は、体内で血液や体液養分として発育します。そのため、感染すると貧血(ひんけつ)がおこり、ひどくなると激しい動悸(どうき)、手足のむくみや爪(つめ)の変形がみられることもあります。
 腹痛や下痢(げり)などもおこります。
 幼虫が皮膚から侵入したときには皮膚炎がおこり、かゆみを感じます。
[検査と診断]
 浮遊法(ふゆうほう)という方法で糞便(ふんべん)を調べて、虫卵(ちゅうらん)が見つかれば診断がつきます。
 また、発病初期に血液を調べると、好酸球(こうさんきゅう)(白血球(はっけっきゅう)の一種)の増加がみられます。
[治療]
 パモ酸ピランテルを1回内服すれば治ります。貧血に対しては鉄剤が使われます。
[予防]
 生野菜は、よく水洗いをしてから食べましょう。流行地では、田畑素足で入らないように心がけましょう。

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栄養・生化学辞典 「鉤虫症」の解説

鉤虫症

 鉤虫の寄生によって起こる症状.鉄欠乏性貧血などが観察される.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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