日本大百科全書(ニッポニカ) 「銀ペントランド鉱」の意味・わかりやすい解説
銀ペントランド鉱
ぎんぺんとらんどこう
argentopentlandite
銀(Ag)・ニッケル(Ni)・鉄(Fe)の硫化鉱物の一つ。ペントランド鉱の(Fe,Ni)の1/9を銀で置換したものである。ペントランド鉱系列の一員。1971年ロシアの西シベリア、タルナフTalnakh地方オクチャブルOktyabr鉱山から最初に記載されたときはペントランド鉱の変種とされたが、1977年別種であると判定された。結晶学的に同構造であるがペントランド鉱との中間物は知られていない。自形は正八面体。形態的にはペントランド鉱と同じ。
超塩基性~塩基性深成岩に伴う正マグマ性銅鉱床、広域変成岩中に発達する変成層状硫化鉄鉱鉱床、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)、深熱水性鉱脈型銀鉱床中などに産する。共存鉱物は黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、黄銅鉱、キューバ鉱、黄錫(おうしゃく)鉱、方鉛鉱、閃(せん)亜鉛鉱、石英、方解石など。日本では岩手県釜石(かまいし)市釜石鉱山の接触交代鉱床中、高品位の銅鉱石の少量成分として産する。同定はペントランド鉱よりはるかに褐色味を帯びた色調と、表面に生ずる斑(はん)銅鉱様の紫色がかった錆(さび)による。劈開(へきかい)は打撃によってしばしば発達する。命名は「銀の」という形容詞とペントランド鉱の結合による。
[加藤 昭 2016年3月18日]