日本大百科全書(ニッポニカ) 「録鬼簿」の意味・わかりやすい解説
録鬼簿
ろくきぼ
中国、元初以来の散曲、雑劇の作者、小伝、作品名を記した書。鍾嗣成(しょうしせい)著。上下二巻。上巻は北方の人、下巻は杭州(こうしゅう)を中心に南方の人を記し、各巻のなかの配列はおおむね時代順による。至順元年(1330)の自序を付すが、その後にも筆を加えたらしい。テキストの系統には康煕(こうき)年間(1662~1722)刊行の『曹楝亭(そうれんてい)十二種』本と、民国に発見された天一閣蔵鈔本(しょうほん)(明(みん)、賈仲明(かちゅうめい)増補)があり、両者は作者の配列、作品名の記録数に異同がみられる。さらに明、無名氏著『録鬼簿続編』があり、元・明初の劇作家、小伝、作品名、作者不明の作品名を記す。曹本と天一閣本を校注し続編を付した『録鬼簿、録鬼簿続編』(1957・『中国古典戯曲論著集成』2)、『録鬼簿新校注』(1957・文学古籍刊行社)がある。元曲研究に欠かせない史料である。
[平松圭子]
『吉川幸次郎著『元雑劇研究』(1958・岩波書店/『吉川幸次郎全集14』所収・1968・筑摩書房)』