日本大百科全書(ニッポニカ) 「長年加速」の意味・わかりやすい解説
長年加速
ちょうねんかそく
天体の黄経が時間の二乗に比例して増加する現象。永年加速ともいう。長年加速は17世紀末に月の運動で初めてみいだされた。この長年加速は、自転速度が徐々に遅くなりつつある地球の自転を基にした時計(世界時)を用いていたことによる見かけ上のものであり、実際は長年減速であることがわかった。地球の自転速度が遅くなるのは、月の引力による潮汐(ちょうせき)摩擦によるものである。地球の自転角運動量が減少した分だけ月の公転の角運動量が増加、すなわち月は地球から徐々に遠ざかりつつある。その遠ざかり方は、観測より求められた長年減速から計算すると、1年につき約4センチメートルである。遠い将来には、自然の大スペクタルである皆既日食は見られなくなるであろう。長年減速は、火星や土星の衛星にも発見されている。その原因は潮汐摩擦によることはわかっているが、細かいメカニズムはいまだに解明されていない。
[木下 宙]