長年加速(読み)ちょうねんかそく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「長年加速」の意味・わかりやすい解説

長年加速
ちょうねんかそく

天体黄経が時間の二乗に比例して増加する現象。永年加速ともいう。長年加速は17世紀末に月の運動で初めてみいだされた。この長年加速は、自転速度が徐々に遅くなりつつある地球自転を基にした時計(世界時)を用いていたことによる見かけ上のものであり、実際は長年減速であることがわかった。地球の自転速度が遅くなるのは、月の引力による潮汐(ちょうせき)摩擦によるものである。地球の自転角運動量が減少した分だけ月の公転の角運動量が増加、すなわち月は地球から徐々に遠ざかりつつある。その遠ざかり方は、観測より求められた長年減速から計算すると、1年につき約4センチメートルである。遠い将来には、自然の大スペクタルである皆既日食は見られなくなるであろう。長年減速は、火星土星衛星にも発見されている。その原因は潮汐摩擦によることはわかっているが、細かいメカニズムはいまだに解明されていない。

[木下 宙]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「長年加速」の意味・わかりやすい解説

長年加速
ちょうねんかそく
secular acceleration

永年加速ともいう。 1693年,E.ハレー古代日食月食の記録を調査して,月の公転運動が加速されることを発見した。これが長年加速で,100年につき約 10秒と求められている。これは理論では説明できない量で,長い間,天体力学の大きな問題となっていた。 1920年代になって,W.ド・ジッターや S.ジョーンズ太陽水星金星の運動を調べ,これらの公転運動にも月と同様の長年加速が存在することを見出した。その結果,これは潮汐摩擦の影響で地球の自転が遅れ,1日の長さが 100年につき約 0.001秒の割合で長くなっているためであることが明らかになった。

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改訂新版 世界大百科事典 「長年加速」の意味・わかりやすい解説

長年加速 (ちょうねんかそく)

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世界大百科事典(旧版)内の長年加速の言及

【永年加速】より

…長年加速ともいう。天体の運動の変動には,不規則的な変動と,時とともに加速されていく動きの二つがあり,この後者を永年加速という。…

※「長年加速」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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