長秋記(読み)ちょうしゅうき

改訂新版 世界大百科事典 「長秋記」の意味・わかりやすい解説

長秋記 (ちょうしゅうき)

権中納言源師時(1077-1136)の日記。書名は,師時が永く皇后宮権大夫であったことから,皇后宮の唐名長秋宮〉にもとづいて名づけられた。また師時の姓名の各1字の偏をとって《水日記》ともいう。1105年(長治2)より36年(保延2)までの記事を存するが,中間に欠逸がある。ほかに1087年(寛治1)より1102年(康和4)の間の目録が伝わる。師時は有職故実に精通しており,儀式の詳しい記事が多い。東山御文庫に藤原定家らの書写した古写本22巻がある。《増補史料大成所収
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「長秋記」の意味・わかりやすい解説

長秋記
ちょうしゅうき

権中納言(ごんちゅうなごん)兼皇后宮権大夫(ごんだいぶ)源師時(もろとき)(1077―1136)の日記。『長秋記』の名は皇后宮の唐名である長秋宮にちなんだもので、ほかに『権大夫記』『師時記』、さらには姓名の一部の「源」と「時」の偏をとって『水日記』ともいう。もとは1087年(寛治1)から1136年(保延2)まで50年間にわたって70巻近くあったというが、いまは欠巻も多く、1111年(天永2)からの13巻ほどである。師時は有職故実(ゆうそくこじつ)に明るく、鳥羽(とば)天皇の皇后美福門院(びふくもんいん)(得子)の伯父にあたることもあって宮廷機微にも通じていた。その意味からも『長秋記』は政治、朝儀典礼を知るために欠くことのできない文献で、そのほか仏教関係、世相風俗の記事もまま見受けられる。院政期の動向を知る貴重な史料である。『史料大成』に二冊本で所収。

[朧谷 寿]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「長秋記」の意味・わかりやすい解説

長秋記
ちょうしゅうき

『権大夫 (ごんのだいぶ) 記』『師時 (もろとき) 記』ともいう。源師時 (1077~1136) の日記。師時は村上源氏の出。権中納言まで昇進し,長らく皇后宮権亮 (ごんのすけ) ,権大夫の職にあった。そこで,中国で皇后の宮殿を長秋宮と称することから,彼の日記を後人が『長秋記』と名づけたもの。源のさんずいと,師時の「時」の日偏とをとり『水日記 (すいにっき) 』ともいう。寛治1 (1087) 年から保延2 (1136) 年までのうち,約 30年分の記事が伝わっている。平安時代後期の宮廷や社会情勢,貴族の信仰や習俗がよく記載されている。

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百科事典マイペディア 「長秋記」の意味・わかりやすい解説

長秋記【ちょうしゅうき】

権中納言(ごんのちゅうなごん)源師時(もろとき)の日記。師時は永く皇后宮権大夫(こうごうぐうごんのだいぶ)の地位にあり,皇后宮の唐名〈長秋宮〉にちなんで書名とした。《権大夫記》《水日記(すいにちき)》ともいう。1105年から1136年までの記事が伝存するが,途中に欠落がある。1087年から1102年の目録も伝わる。師時は有職故実(ゆうそくこじつ)に精通し,宮廷内の儀式などの記述が詳しい。

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世界大百科事典(旧版)内の長秋記の言及

【田楽】より

…都近くではすでにこのころには田植行事が観賞の対象とされ,芸能化しているが,もともとは信仰を背景とした民俗行事であったはずである。《長秋記》大治4年(1129)5月10日条に記される田植では,田主を専門の猿楽芸能者である弘延(こうえん)がつとめたのをはじめ,苗を植える早乙女が20人,それに懸鼓,佐々良(ささら),笛などの囃し方を田楽者と呼んで,その華やかなようすを記しているが,別に職業芸能者の田楽法師の一団も参加しており,貴族御覧の田植が一段と芸能化していたことが知られる。このようなにぎやかな田植行事は,その後神社の神田などを植える神事として各地に伝承されるが,その代表的なものが大阪市住吉大社の御田植神事(現在6月14日)で,近世まで専業の猿楽者・田楽者が参勤して,田の畦(あぜ)を舞台に芸能を演じていた。…

※「長秋記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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