改訂新版 世界大百科事典 「閉環」の意味・わかりやすい解説
閉環 (へいかん)
ring-closure
(1)分子内縮合による閉環 これは分子内の2種の官能基が縮合反応を起こして環式化合物を形成する場合で,ヒドロキシ酸がラクトンを生成する反応(式(1))がこれに相当する(縮合)。
(2)分子内付加による閉環 これはC=C結合などの不飽和結合に分子内の官能基が付加して閉環する場合で,式(2)のように,分子内オキシセレン化反応でテトラヒドロフラン環を生成する例や式(3)のように,分子内アセタールを形成する例があげられる(付加)。
(3)分子内求核置換反応による閉環 分子内に脱離しやすい基と求核性の高い基があれば,式(4)のように分子内求核置換が起こって閉環する(求核反応)。
(4)共役π電子系が熱または光によって閉環する場合 共役π電子系はπ電子数によって,熱または光で閉環する。式(5)に示すように,2,4,6-オクタトリエンは6π電子系なので熱で閉環し,立体選択的に5,6-ジメチル-1,3-シクロヘキサジエンを生成する。この閉環反応において,メチル基の立体化学は互いにシスの関係にあるものだけが生成して他方の異性体が生成しないことは,ウッドワード=ホフマン則で説明された。
式(6)に示すように,共役ジエンが光で閉環してシクロブテン環を形成する反応も知られている。この反応も立体選択的に進行するが,熱では起こらない。これらの事実もウッドワード=ホフマン則で説明されている。
そのほか閉環反応としては,分子内付加環化などもある(付加環化)。
執筆者:友田 修司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報