化学辞典 第2版 「環化」の解説
環化
カンカ
cyclization
環形成,閉環ともいう.新しい結合の形成により,非環状化合物が環状化合物になる反応をいう.分子内で結合が生じる分子内環化と,2分子間で二つの結合が同時または段階的に生じる分子間環化がある.分子内環化反応において,イオン反応によるものは一般的に三,五,六員環を生成しやすいのに対し,ラジカルカップリングでは種々の大きさの環が生成しやすい.光または熱による環状電子反応はウッドワード-ホフマン則に従うため,特定の大きさの環しか生成しない.代表的な分子内環化反応として,
(1)カルボアニオンやオキシアニオンの求核置換反応(炭素三員環,エポキシド,γ-ラクトンなど),
(2)カルボアニオンのカルボニル基やニトリル基へ求核付加ではじまるアルドール縮合,ディークマン縮合など(C5-員環),
(3)アシルカチオンの求電子芳香核置換,すなわち分子内フリーデル-クラフツ反応(C5-員環),
(4)カルベニウムイオンの求電子付加ではじまるポリエンの環化(C6-員環),
(5)ラジカルカップリングによるアシロイン縮合,などがある.分子間環化反応として,
(6)カルベンによる付加環化(C3-員環),
(7)ケテンのアルケン,イミンとの[2+2]付加環化(C4-員環,β-ラクタム),
(8)光によるアルケン付加環化(C4-員環),
(9)光によるアルケンとカルボニル化合物の付加反応(オキセタン),
(10)1,3-双極子付加(ヘテロ五員環),
(11)ディールス-アルダー反応(C6-員環),
(12)カルボアニオンのジハロアルカンへの求核置換反応,
(13)ブタジエンの遷移金属による二量化,三量化(C8,C12-員環),
などがある.環化の様式にはエキソ環化とエンド環化の2種類があり(図),反応の種類によりいずれが有利かが決定される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報