世界時と協定世界時の差が1秒の調整を必要とするとき、挿入または削除される1秒を閏秒という。地球の自転によって決まる時の単位としての1秒は自転速度の不規則性のために一様ではない。この不規則性を取り除き、平滑化したのが世界時であるが、それでも一様ではない。そのため1956年、国際度量衡委員会は、不変と考えられる地球の公転に基づく暦表時で1秒を定義することにした。しかし、暦表時は精密に時の流れを示すことができない欠点があるため、1967年には1秒の時間を保持するものとして原子時が定められ、秒は暦表時の秒からセシウム原子の振動に基づく秒に切り替えられ、パリの国際報時局が国際原子時を決めることになった。この原子時の秒を基準とした人工的時系を協定世界時という。世界の標準電波秒報時は協定世界時に基づいて1972年1月1日から発信されているが、これを世界時の1秒の±0.9秒以内に管理するため、必要に応じ12月および6月(第一優先)、3月および9月(第二優先)の末日の最終秒の後へ閏秒を挿入、または削除することによって調整が行われる。現在は地球の自転が遅れ協定世界時が進んでいるため、協定世界時の23時59分59秒の次へ1秒挿入する正の閏秒が実施されているが、逆に将来地球の自転が速くなり、協定世界時のほうが遅れると負の閏秒の調整が行われることになる。
[渡辺敏夫]
2022年11月、国際度量衡局が事務局を務める国際度量衡総会で、少なくとも100年間は時刻を調整しないとする決議がなされ、2035年までに閏秒は実質的に廃止されることになった。その理由としては「閏秒の採用によって生じる不連続が、衛星ナビゲーションシステムや、通信、エネルギー伝送など重要なデジタルインフラに深刻な誤動作をもたらすリスク」があげられている。なお、閏秒が廃止されても、原子時と天文時の差は100年後でも1分程度と予想されている。
[編集部 2023年8月18日]
1972年の年初から,世界の標準時はセシウム原子時計の秒で刻まれ,その時刻は世界時(UT1)からつねに±0.9秒(1974改定)以内に収まるように国際的に管理された協定世界時に基づいている。この±0.9秒からはみ出す可能性が見込まれると,協定世界時の12月,6月(第1優先),または3月,9月(第2優先),さらに必要とあれば任意の月の月末日の23時59分59秒(日本時間では1月,7月,または4月,10月,さらに任意の月の初日の8時59分59秒)の次へ第60秒を挿入して,標準時の時刻をきっかり1秒遅らせる。この挿入される1秒を正の閏秒という。現在,平均太陽時はセシウム原子時計に比べて1年当り約1秒の遅れ率となっているので,いままでのところ正の閏秒が毎年1回の割合で挿入されてきた。しかし将来の予想は許されない。遠い将来には,前述の時点の第59秒をまびいて標準時の時刻を進める必要が起こるかもしれない。この際まびかれる第59秒を負の閏秒という。
執筆者:飯島 重孝
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…近年の地球の自転速度では,国際原子時に比べ,世界時のほうが1年に約1秒の割合で遅れていくので,ほとんど毎年協定世界時に1秒加えて調整を行っている。これを〈閏(うるう)秒〉という。
[セシウム原子時計]
代表的な原子時計としてセシウム原子時計の原理を述べる。…
※「閏秒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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